今日は十三夜の月。中秋の名月に次いで美しい月だそうです/10/6=旧9/13・庚戌

旧暦9月13日の今日は、「十三夜の月」。
毎月めぐってくる同じカタチの月のくせに、今日の月は、旧暦8月の十五夜の月「中秋の名月」とならぶ特別な月。

…って、昨夜から台風来ちゃってますが、夕暮れ時の天気はどうだろうか?

十三夜の月

写真は、数年前の十三日目の月。
正確には旧暦9月3日「十三夜の月」ではありませんが、晴れればこんな風。
満月よりも十三、十四番目の月のほうが、西の夕日が反射した中に上ってくるので風情があります。

ちなみに、十五夜の次にくる名月だから「後の月」とも呼ばれます。

十五夜の月見だけでは「片見月」と嫌った本当の意味は?

かつては、十五夜に月見をしたら必ず十三夜にも月見をするものだといわれ、十五夜だけで終いにするのは「片見月」などといわれて嫌われていたんだそうです。

そーなんだぁ!
それはやばいよ!!

私の場合、「十五夜」月見は毎年向島百花園にて。
ならば、またも足を運ばなければいけないかしら?
と少々焦る。

しかも、江戸の風俗をまとめた喜多川守貞の『守貞漫稿』(『近世風俗志(守貞謾稿)〈4〉』 岩波文庫)をパラパラ眺めていたら、「片見月」の記述がちゃんとあって、十五夜の日の項。

<もし他に行きて酒食を饗さらるか、あるひは宿すことあれば、かならず九月十三日にも再び行きて、今日(=十五夜の日)のごとく宿すか、あるひは酒食を饗さるることとする人あり。これをなさざるを片身月と云いて、忌むこととす。>

江戸時代には、嫌うというより禁忌にまでなっていた気配!
そして、やっぱり、江戸の頃から「同じ場所で眺める」のもはずせない事柄だったようです。

がっ!

そこに続いて、<俗諺のはなはだしき>とか、<この故に大略、今日(=十五夜)は他家に宿らざることとす。>とか。
あれれ??

実は、著者喜多川守貞は、この風習に批判的だったみたい。
「片見月」になるかた縁起が悪いというなら、十五夜の日も、外出しないでいようとか、と決意までしていた。
って、その頑固さに笑えます。

彼は、上方から江戸に移住したひとで、ふたつの土地の風俗違いを細かくまとめたものがこの『守貞漫稿』ですが、それによれば、この片見月というのは<江戸の俗>、つまり江戸だけで言われていたものらしいとあります。

…ふーん。
それじゃあ、別に同じ場所に出かけていかなくてもいいのかな?

実は、吉原などの遊里から始まった風習説もある

今度は、『東都歳時記』(二巻 東洋文庫)から見つけだ記述。

<吉原でも、両見月の登楼を言うが、片見月を主張するもとは案外吉原であったかもしれない>

つまり、吉原では、双方を祝う段取りとして、十五夜に来た客をまた翌月再訪させるためのアイデアだったということで、確かに縁起が悪いといわれてしまえば、気になるものだし、出かけてくる良い言い訳にもなるってことです。

ふーむ、片見月は、吉原の素晴らしき営業戦略だったかも?
としすれば、ずいぶん洗練された戦略ですよね。

すごい。

「十三夜の月見」は日本独特の風習。

「中秋の名月」は、中国から渡ってきた行事ですが、「十三夜の月見」は、日本のオリジナル。

『守貞漫稿』にもどれば、
<宇多帝の保元元年に始まる。今夜はじめて宸遊(しんゆう)あり。これを名月の始とする>
=平安時代の後期、宇多天皇が十三夜の月見に出かけたのが始まりである説。

他にも、もっとさかのぼって、平安初期の醍醐天皇の時代に開かれた観月の宴が風習化した説などあります。

そうと知ったからではないのですが、「十三夜」という、微妙に足りないものに美しさを見出すという感覚は、やはり日本的なのかなぁとも思いますね。

しかし、日暮れも早くなって、夕暮れ近くの外出はちょっと…と思う。
だから晴れても、今日は、家で月を愛でたいものです。

室礼の準備もいたしましょうか。

十五夜は「芋名月」
十三夜は「栗名月」とか「豆名月」。

お供えするのは、その時期の収穫物が一般的で、それが、そのまま月の呼称になった模様。
(全国共通な呼び名でもないようで、豆と芋が逆だったりする地方もあるようですが…)

もう一度『守貞漫稿』を紐解いて…。

<江戸にては、今夜も八月(=旧暦の十五夜)と同製の団子に、絹被(きぬかずき)と号して皮付の小芋および湯出栗・生柿・枝豆、以上五種を供す。けだし八月も今夜も、三都とも、毎家大同小異の例ありて、一定とはいいがたし。>と

あって、芋も栗も豆もさらには柿まで加え、勢ぞろい、ちょっと大変な騒ぎです。

参考までに三都のうちの京坂はどうかというと

<塩煮の豆を供す。けだし枝を除き、まめがらのままの塩茹でなり>
と、シンプルに枝豆のみ。

江戸ではかならず芒を飾ったようですが、京坂では芒も省略だったみたい。

ふーむ。
やっぱり、十三夜の月見を十五夜に匹敵すほどの重要な行事にとらえていたのは、江戸だけだったかもね。

遊郭吉原の戦略勝ちか?

で、現代の東京ですから、団子に芒ですっきりとお祝いすることといたします。

月見お供え

現代の東京月見事情においては、十三夜はほぼ無視状態。

で…。

月見団子は売ってない→上新粉をしこしこ丸めました。
月見花→もちろんそうゆうセット商品はなし、芒ももちろん売られていません。しかし、菊もりんどうも旬なので安く。芒は、あらかじめ秘密の採取ポイントにてGET(笑)。

◆今日は、2014年10月6日/旧暦9月13日/長月庚戌の日
◆日の出5時39分 日の入17時19分/月の出15時48分 月の入2時46分