11月28日は、物理学者にして名エッセイスト、寺田寅彦センセイの誕生日です。/11/28=旧10/7・癸卯

好きな作家は、命日はともかく、お誕生日を覚えておこう

と、ある日気まぐれに思い立ってからこっち、命日はぼんやり忘れることがあっても、生まれた日はちゃんと覚えている不思議。
といっても、読書傾向が偏っていて、覚えるのに不都合があるほど、好きな作家が多くない…からなんですけどね。

今日の日も、ああ、そうか11月28日は、センセイの誕生日でしたねとカレンダーを見ながら思い出しました。
といっても、身内でもなんでもないので何かお供えをするというわけでもありません。
やることと言えば、我が書棚からその方の著作を取り出して…読む。

今年は、寺田寅彦センセの『柿の種』にするか、それとも全集?

表紙の似顔絵が面白い、ちくまの日本文学全集『寺田寅彦』 (ちくま日本文学 34)にしました。

寺田寅彦 全集

こうして、ここ数年。
11月28日が来ると、手にするのは科学者にして俳人、随筆の名手でもあった寺田寅彦センセイのご本。
というわけで、何度も読んでやや擦り切れた感のある背表紙が書棚の一角に並ぶのを眺め、「またも中毒の波が襲ってくるかなぁ」と、ココロひそかに思うのも同じ。

書棚

寺田寅彦センセイの著作は、ほどよい分量で物語が完結する短編で、描かれていることは平易で深く、そしてときどき小気味良く、癖になる。
読みはじめたら最後、あと一話、あと一話ととまらなくなってもしまうのでした。

そういう意味でこの『柿の種 』(岩波文庫)などは、タイトルが言いえて妙。

柿の種

あのおかきとピーナッツがまじった「柿の種」のように、あと一個食べたら今日はお終いと思いつつも、そうとうなココロの強さをもって対峙しなければ辞められない。
そしてついには、読書中毒を呼び覚まし、書棚の少ない蔵書では事足りず、図書館へ行ったり、パソコンで青空文庫を覗いたり…。
そんな風になること必至という按配なのです。

つまみ読みもまた楽しい。

取り出した本は、一ページから読み始めることがなくても楽しい。
…というのも、寺田寅彦著作の特長。

実際、もう何度も何度も読み返してしまってるというのもあるのですが、理由はそれだけではもちろんない。

たとえば、目次にならぶ気になる言葉…今回選んだ本なら、気になったのは、「自然界の縞模様」とか「西鶴と科学」とか…を捜す。
あるいは、パッと偶然開いたそこから読んで、その物語の行間に、本日わが身に巻き起こりそうなことを予感してみたり
…つまり運勢占い代わりに使ってもみる(笑)。

などなどと自由自在に読書可能な度量の大きさが素晴らしい。

センセイの興味は、多岐にわたり、それも読書中毒を引き起こす理由

寺田寅彦センセイの本職は、物理学者。
しかし、専門分野のテーマであっても、文章は誰にでもわかるように平易、興味の範囲は科学の領域を遥々と超え、文学、歴史と膨らんだかと思えば、日々の暮らしや子どもたちのことなどにもおよび、そのバランスのよさのようなものが心地良い。

だから、気になったページから読むという風に、勝手気ままに読み始めても、
あと一話、
あともう少し、
…と夢中になって、結局1冊読み終えてしまうのでしょうね…今回も。

そういえば、センセイ!

2013年の春は、お誕生日でもないのに『柿の種』を取り出して、あっという間に中毒症状に陥りました。
きっかけは、大正12年の11月のあたりのお話。
寺田センセイの筆は、関東大震災に見舞われた当時を、短いながらも科学者と芸術家の二つの視点とココロで書き描いていらっしゃった。
その、つい数日前に大きな地震に見舞われたばかりで、なんだか不思議な縁を感じたものです。

そして、今年も、何度か目の読書中毒のスタートです。

ともかくも、寺田寅彦センセイ、お誕生日おめでとうございます。

57年という短い人生だというのに、たくさんの著作をありがとうございます。

そしてそして…。
あなたのあとには、養老孟司センセイとか森毅センセイとか、科学者が面白い著作をものする時代もやってきました。
それもこれも、寺田寅彦センセイが輝かしき先駆者です。

◆今日は、2014年11月28日/旧暦10月7日/神無月癸卯の日
◆日の出 6時29分 日の入16時29分/月の出11時05分 月の入22時26分

コメント

  1. 安田裕隆 より:

    ご無沙汰しています。
    先日、3連休に前後1日づつお休みを付けて高知に行ってきましたが、寺田寅彦センセイの記念館(実家の跡)にも行ってきましたよ。

    http://toratomo.yu-nagi.com/

    先の大戦での戦火で焼失してしまい、再建された建物ですけれど、高知城すぐそばの落ち着いた所にあります。 案内係のご婦人が丁寧に説明してくださいました。

    また、高知城の脇にある高知県立文学館には、寺田寅彦記念室があります。
    ここにはセンセイゆかりの豊富な資料があって、多彩な才能を垣間見るには良いところだと思いますよ。

    http://kochi-bunkazaidan.or.jp/~bungaku/t.terada.html

    牧野センセイもいらっしゃるので、高知にもお越しください・・・と、奈良に住んでいる自分が言うのもナニですけれどね。

    では~

    • taomichiru より:

      ああ、高知って、ただならない場所ですよね。
      行きたいというより、1年ぐらい住んでみたいものです。