好きな作家の誕生日には、その著作を読んで祝おう!
なんて、思い始めたのはいつからだったか。
・対象となるのは、子どものころから読んでる作家。
・その作品から、少なからず影響を受けたかも…と思っているヒト。
好きな作家でも、現役バリバリの方は、新作が出たら読んで、面白かったらこのブログにレビューするつもりだから、ちょっと除外。
で、けっきょく、明治大正、昭和初期の、逝ってしまった作家(私の好きなという偏りあり!)の誕生日の覚書みたいになっています。
なので、若くして逝った、この方の誕生日を忘れていました。
東北育ちの思春期に、彗星のごとく現れて、私の江戸趣味を形づくってくれたヒト。
11月30日は、早世の作家・杉浦日向子さんの誕生日です。
原宿と代官山がある町=東京と思っていた、田舎育ちの少女に、おもいっきしのカルチャーショック!
北斎などの浮世絵師と、彼らが描いた江戸人の粋。
必要なモノしか持たないその暮らしの道具が、かえっていちいちステキに見えて、
そこで、飄々と生きる潔い人たちがかっこいいと思った。
そんな江戸東京、どんな雑誌にも載ってないよ!
それを最初に知ったのは、この『百日紅』シリーズ。
書店に行けば、今も江戸風俗研究家としての著作が多く。
生前は、NHK「お江戸でござる」の解説者として、有名だった方。
しかし、その杉浦日向子さんが世間に登場したのは、漫画家としてだったって知っていますか?
江戸人が浮世絵を見る感覚はこうかもなぁ
どこかの書店で遭遇し、最初、表紙を眺めて思ったのは、そうゆうことで…。
本は好きだが、お金がないので、ほぼ立ち読み。
そういえば、漫画にビニールなんてかかってなかった、いい時代でした(笑)。
江戸時代と言えば、試験で苦労した何代将軍が何をした…の暗記。
ああ、歴史ってつまらない!の筆頭で、それとこの江戸の話は、あれれ?
ずいぶんと違っているじゃあないですか!
ってコトで、その面白さに、我慢しきれず買いました。
1980年代初頭に980円!たっ、たかいっ!
そして、今も我が書棚にいらっしゃるから、とっくにもとはとったけどね。
20世紀に買って、21世紀になっても持ち続けている本。
そして、時々、思い出したように手にとっては、私の江戸好きはココから始まっているのは間違いないと思うのです。
そして、はまり込む江戸の世界
『百日紅』は、浮世絵師「葛飾北斎」を通して、江戸を描いた。
手法は漫画ながら、江戸人が現代人に江戸のコトを伝える一冊。
…といった佇まいの本。
たとえば、その時代の風俗や、人々の死生観。
さらには、人びとの手に届く範囲にいて感じられた、「妖怪」とか「魑魅魍魎(ちみもうりょう)」とか。
それらを、彼らが「まあ、そうゆうもんだから、しかたがねぇ」とひょうひょうと受け入れる様が、あまりに魅力的。
ああ、私たち日本人は、このステキすぎる江戸人たちとつながっているんだなぁ
…と、今読んでもしみじみ幸せに思えます。
英雄や偉人ではなく、飄々と生きるヒト
って、まあ、主人公の北斎は十分偉人ですけどね(NHK大河で北斎をテーマにやってほしい。脚本はクドカン希望)。
自分の周囲にある、「怪」や「妖」。
いわゆる、闇や歪み、退治するのではなく受け入れて、面白がってみる。
幕府のもとに虐げられ、庶民は、いっしゅ諦観して生きていたかのように(当時の教科書では)学んだものの、それってぜんぜん違うじゃん。
私たちの祖先・江戸人は、しなやかで強く、受け入れたとみせて、言うことは聞かない。
飄々として、譲れないところは譲らず生きていたヒトたちかも。
そして、その象徴として描かれる北斎。
進み過ぎて、便利になり過ぎた現代の各種矛盾をどうするかの議論には、時に「江戸時代にもどるわけにもいかないしね」と発せられたりするけれど、モノの考え方は、そこへ戻ったほうがいいんじゃあない?
…そんなことを教えてくれた杉浦日向子は、1993年には漫画家を引退。
そして、2005年7月22日に、46歳という若さで逝った。
ちょっとショックだった私は、「江戸に帰ったのよ」と、うそぶいて今に至る。
今日は、その杉浦さんの誕生日です。
美しい漫画と、精緻な江戸風俗を描き、誇るべき我が江戸庶民ワールド。
あなたの作品から、私たちのルーツがいかにあっけらかんと、ひょうひょうと、しなやかに豊かであったかを知りました。
ホント、ホントに、ありがとう!
…って、コトを書きたくて、今日のテーマは『百日紅』。
だけど、2015年アニメ映画化が決まっていて(⇒杉浦日向子「百日紅」を原恵一がアニメ映画化、来年公開/コミックナタリー)、書店に文庫が並んでいたというのも大きなきっかけであります。
◆今日は、2014年11月30日/旧暦10月9日/神無月乙巳の日
◆日の出 6時31分 日の入16時28分/月の出12時24分 月の入–:–