師走と聞いたら、妙に赤い実が増えたような…。街は南天だらけなんですねぇ/12/2=旧10/11・丁未

いつのまにか師走ですよ!

早い、早すぎますね。
なんか、誰かが早回しのボタンでも押しているみたい。

で、師走の声を聞くと、民家の庭や、路地に顔出す植栽に、赤い実のつく植物が目立つようになった気がします。
…って気のせい?

特に、目立つのは、小さな形良い葉っぱに囲まれるようにして実る赤い南天の実。

ひとたび、「ああ、南天だ」と気がつけば、ここにも、あそこにも。

南天11月上旬

この南天の木。
その音「ナンテン」を「難を転ずる」に語呂合わせして、昔から縁起が良い木の地位を預かってきました。

そうゆう理由もあって、南天は、古くより、家の南西・裏鬼門、北東の表鬼門には柊を植えて、対になって家に邪悪なものが入ってこないよう守りを固めてくれました。

つまり、南天は、日の入の方角に植えられる赤い実。

…ですが、平成の世には、そんなルールは有名無実。
あらら、南天が、ひそかに街中に侵食を果たしておりましたようですっ!

南天の木と日本人は、古い付き合い以上の間柄のようで…。

南天も、多くの渡来物はこのルート同様、中国から渡ってきたもの。
…というのははっきりしているみたいですが、

平安時代に弘法大師(空海)が、唐から持ち帰ったとか
奈良時代に薬用として渡来していたとか..etc。
実は、諸説あるようで、まあ、ざっくりいえば、日本人とは古い付き合いの植物。

その実は、咳止めの薬などに使われて、現代にも「南天のどあめ」というのがあるのように、ずいぶん長く私たちとともにあります。
葉っぱのほうも、殺菌防腐作用があると珍重されてきました。

お赤飯などに南天の一枝も、南天の縁起によるものに加え、こんな事情によるもののようですね。

時代が少しすすんで戦国時代あたりから江戸時代には大いに珍重。

武将たちにとって、南天の葉は重要アイテムだったよう。
鎧をしまう箱に南天の葉を入れ、出陣には枝を床にさして勝利を祈るなど重用します。

そして、江戸時代にもなれば、縁起木である南天が、縁起担ぎの江戸人にほおっておかれるはずはなく。

「南天を庭に植えれば火災を避けられる」とも言われ、どの家々にもこぞってそれが植えられました。

東京の街をそぞろ歩けば、ことさらに多く目に付く南天の赤い実は、こんなところにルーツがあるのかもしれません。

折々に美しいのも珍重の理由かも?

さて、この南天。
実は、蕾の頃から、見た目のよろしく、名前が縁起担ぎになるのに加えて、このルックスの良さも日本の庭に多く植えられてきた理由かも。

たとえば、初夏のつぼみの頃はこんな風。

南天つぼみ

小さなつぼみが爽やかさを誘います。

そして、すこしつぼみが膨らむと、初冬の実の頃をイメージするようにやや赤くなる。

南天 咲はじめ

花の盛りは、梅雨の頃で、なんだか雑穀みたい。

南天 花

そういや、つぼみの赤は、いったん消えるのですね。

7月下旬にもなれば、青い実を結び。

南天 青の実

ココまでは、けっこう律儀に観察してたんですよねぇ…。

8月の暑さと、その後の花々の饗宴で、南天のことなどすっきり忘れておりまして。

ハッと気づけば、師走の南天。

南天 赤い実

例年は、すっかり鳥に食われて、実が疎らなんですが、今年は、赤い実がたくさんついているのに間に合ったのが救いです。

しかし、この赤い南天の実を見ちゃうと、どうも気分がせくんですよねぇ。

これと水仙あたりが、花屋の店頭を飾れば、もう2014年も終わり…です。ああ。

◆今日は、2014年12月2日/旧暦10月11日/神無月丁未の日
◆日の出 6時32分 日の入16時28分/月の出13時39分 月の入 1時41分