急に夏が去り、秋がやってきた?となれば、風情たっぷりの「虫聴き」を楽しみに、向島百花園へGO!/8/29=旧7/16・丁丑

さて問題です。
上野の不忍池、王子の飛鳥山、谷中の道灌山といえば?

上野の不忍池、王子の飛鳥山…ならば、共通点も探しやすいが…たとえば江戸の観光地とか。

谷中の道灌山ってのが難しい?

半分正解。
この三か所は、江戸時代の有名観光スポットで、いずれもこの時期、虫聴きのために江戸人たちが集まった場所ナンバー3。

特に、道灌山の虫聴きは、絵に描かれるほどでして…。

道灌山は、現代の地図に照らせば、JR西日暮里駅に隣接する荒川区西日暮里三丁目~四丁目界隈とけっこうなエリアを網羅していたもよう。
今は、西日暮里公園と諏方神社あたりに、当時の面影をかろうじて探せるかなぁ…といった感じで、その西日暮里公園には、かつてそこが虫聴きの名所であったしるしに、こんな看板が掲示されています。

道灌山虫聴き

『大日本名所図会』から尾形月耕画「道灌山の虫聴き」

他には、『江戸名所図会 5巻』「道灌山聴虫(どうかんやまむしきき)」なんかも有名ですね。⇒こちらでどうそ

たしかに、あたりに叢はあるので、秋の虫もいそうです。

がっ!
絶え間なく来る電車のアナウンスやら、蝉の声やらで、微かな声に耳を傾け楽しむ風情…ありません。

道灌山は、かつては眺めもよくて、花見、月見、雪見…など、四季折々の自然が楽しめる場所。
江戸庶民にとっては格好の観光スポットだったってのが、ちょっと信じられない変わりようです。

不忍池も、飛鳥山もちゃんと今に続いているのにねぇ…。
といっても、残りのふたつも、8月末なんてのは、まだまだ蝉の声がうるさくて、そんな風情のある遊びは、ちょっと無理…です。

というコトで…。

江戸から続く庭園の、由緒ある虫聴きへ足を運びます。

向島の百花園。

向島百花園

風情ある「虫聴き」を楽しみたいなら、やっぱりここです。

平成の現代にも「虫聴きの会」が開かれるココは、その期間中(8月28日から31日)閉園時間を21時(入園は20時30分)まで伸ばし、虫の声を楽しむための催しも多数。⇒詳細はこちら

園内に足を踏み入れれば、さっそく待っている虫たちです。

ツユムシやら

ツユムシ

アリとキリギリスのキリギリスもいますよ。

キリギリス

この子はヒメギスというんだって
ヒメギス

一緒になって歌っている虫たちもいます。
虫聴き

手前にいる黒いのはコオロギだよね。

こんなに鳴いてくれる虫がいるんだねぇ。
どんな鳴き声なんだろう?

◆こんなサイトがありましたっ!すごい!⇒鳴き声検索(コオロギ・キリギリス・バッタ)

百花園「虫聴の会」は、園の創始者鞠塢(きくう)の追善供養

この「虫聴の会」は、園を開いた、江戸の商人にして文人であった佐原鞠塢(さはらきくう)の追善供養としてはじめたもの。
なので、仏教の不殺生の教えを由来に、捕らえた生き物を山や野、池などに放ち供養する「放生会」も兼ねています。

放生会は、旧暦8月15日におこなわれるものですが、8月末の日程になったのは、天保2年8月29日に亡くなった鞠塢の追善供養のために、縁者が園内に虫を放ったことが始まりなんだとか。

明治になって、「虫はなち会」というカタチで一般に開放⇒現在に至るということらしい。

なので、虫聴きの会でには放虫用の虫たちもちゃんと用意され…。

方丈用の虫かご

来園者が、庭園に虫を放つ行事もあるのです。

百花園は、都会の喧騒が入ってこないのが魅力

喧噪どころか、草々が燃ゆる場所だし、虫を放つのだから殺虫剤ももちろんまかないはず
…だというのに、蚊の気配も感じたことはありません。

園内では、虫刺されに注意するよう注意喚起されますが、いるのかな?
(私は、けっこうヘビーなリピーターですが、少なくともココで蚊に刺されたことはありません。)

なので、さまざまな秋草を眺めつつ、夕暮れ時までゆっくり過ごし、やがて今年初めての虫の声。

江戸人たちが、庶民に広め、洗練させてた「虫聴き」は、こうして、平成の今にもつながって、ささやかだけど、ほんとに贅沢な遊びだと思います。

◆今日は、2015年8月29日/旧暦7月16日/文月丁丑の日
◆日の出5時10分 日の入18時14分/月の出17時44分 月の入4時11分