さだまさし作『ちゃんぽん食べたかっ!』を読了。
いやあぁ、なんとまあ、濃いー青春時代だっ!
本書が原作で、菅田将暉主演のNHKドラマも面白かったけど、この濃さはなかったなぁ。
…というのが、シンプルな読後感。
濃い上に、なんだか、ココロに染みるコトバや事件が、あちこちにちりばめられて、小説だってのに、思わず付箋が大量に立ってしまった。
実は、このブログを書き終わったら、それをひとつひとつ味わいながら、ノートに写しておこうとも思っている次第。
試しにいちばん最初の付箋はなんだったっけ?
と、見てみたら、美味しい長崎土産の羅列だった(笑)
とくにさださんの好きなのが、雲仙のふもと、小浜町の名物『湯せんべい』なんだって。
それが美味しそうなうえに、その容器の記述<青と赤、雲仙岳の手書きのイラストの色合いは長崎らしくオランダ国旗の配色を用いたのだろう>に惹かれる。
読みだしたのっけから、これはいつか絶対入手せねばと思ったんだっけ。
しかし、その素朴な湯せんべいの記述を、さださんの母親の内職姿にさらりと結び付け、さださんの中学から大学までの青春時代は、その母の家計の苦労に支えられたというプロローグ。
すでに前作『かすてら』も読んでるし、そのNHKドラマ版も見ているから、さださんが、あまり裕福ではない両親の期待と家計の苦労を背負って、バイオリニストになるため、中学から単身上京した少年だったことを知っている。
なのに、やっぱり、もう、ここからして読者もほろっとさせられるのである。
やっぱ、さだまさしさんって、ただモノじゃあないね。
…って、実際ただモノじゃあないんだけどさ。
ってのが、読了して本をそっと閉じ、しばらく呆然と外の景色を眺めたりしたあとの読後感。
音楽家としての才能も、小説家としての才能も、そして、真夜中の番組だってのに、どうもずるずる視聴者を寝させない「朝まで生さだ」の巧みな話術も、みーんな、この時期に発揮され育まれ、磨かれ今に至っているみたい。
そこに加えて、建築現場、リフォーム業者、居酒屋とアルバイトにゆけば、そこでも、才能を発揮して一目置かれる始末だし。
青春時代から器用な少年。
生きる背骨のはずだったバイオリニストの夢は、大学進学前に音大受験をあきらめて、気分的には根無し草。
普通、こうなってしまえば、どっちつかずの器用貧乏で、かえって中途半端な人生。
…になりそうで、実際、主人公は、そこをずーっと悩み続けるのだけれど。
実際、精神を病みそうになり。
大学2年生の時には、カラダを壊して故郷に帰る。
「どの面下げて郷里に帰る」と、長崎に向かう電車の中で涙をこぼした…。
佐田雅志くんだった頃の濃いーい青春物語は…。
本人にとっては大きな挫折を抱えた思春期だけど、<お前が居ないと面白いことが起きる可能性が極めて低くなるので、具合が悪くとも学校へきて保健室で寝ていろ>と友人から言われる高校生。
…って、もうそんな若いころから稀有な存在感を放っていたみたいです。
今、この時代に、さだまさしというヒトがいなかったら…。
うーん、実はファンでもなんでもないんだけれど(詳しく言えば、歌より、小説、それより、夜中のとりとめのない話が好き…なヒトかな・笑)、すごーく詰まんないかもなとマジで思う。
佐田雅志くんは、子どものころからずーっと、各所に才能があって、賢くて、ヒトの気持ちも十分にわかる少年で、だからかえって深く悩んだ。
そして、今の、TVに出てるとちょっとチャンネル変えずに見てよう。
書店に本が並ぶと、ちょっと買ってみようかな。
ラジオや街に流れるUSENで曲がかかれば、併せて小声で口ずさんでる。
そんな、日本の空気のようなスターになったのだなぁと思う。
そんな本。
あっ!あとがきがすごく面白いのも、稀有な一冊かもしれません。
コメント
ご無沙汰しています。ずいぶん前にエキサイトにコメントをしていたfuskです。
相変わらずしっかりブログを作っておられますね。
私も去年半ばからいつまで続くかな?と心配しながら
ブログを始めました。
ご笑覧いただければ幸いです。
「光と影をおいかけて」kiramekuhi.exblog.jp
fuskさん!いゃあ、お久しぶりですっ!
時々どうしていられるかなぁと思い出していました。
そうそう、以前のブログにいただいていたコメントの表現が「ただモノじゃない感」満載。
ブログを始めればいいのに…と思ってました。
これからゆっくり拝見させていただきますねっ!