8月1日は、室生犀星の誕生日。いつものとおり著作を一冊…いや、犀星brithday用には、この2冊が決まりなんです。/8/1=旧6/29・乙卯

「ふるさとは遠きにありて思ふもの…」
の室生犀星さんはこんな暑い一日に生まれた

…って、昨日は民俗学者・柳田國男の誕生日
続きますね。

しかも、どちらも、ネットでたまたま知った体たらく。
しかもどちらもつい最近…。

作家Birthdayに著作を一冊読み祝う。
室生犀星は、必ずこの2冊でと決めてあります。

室生犀星『火の魚』栃折久美子『美しい書物』の組み合わせです。

火の魚と美しい書物

実は、この2冊は、知る人ぞ知る関係を持った2冊なんです。

といっても、昨年は上の写真のように「火の魚」を図書館で借りたのですが、その後、「火の魚」収録の文庫を購入。
今年は、こんな風に組み合わせております。

美しい書物と密のあわれ

文庫『蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ』 (講談社文芸文庫)には、ちゃんと「火の魚」が収録されているので、そこにウソはございません。

美しい書物 (大人の本棚)』の著者、栃折久美子さんはブックデザイナー。

そして、彼女は、小説「火の魚」に登場する婦人記者、折見(おりみ)とち子のモデルでもある。

物語は、新作小説の表紙に「金魚の魚拓」を使いたいと固執し始めた老作家が、婦人記者に金魚の魚拓を依頼。さまざまなやり取りを経て、その魚拓が採用されるまでを描いた短編小説。

実は、これらはすべて実際の出来事をモチーフに描かれていて、新作小説は、『蜜のあはれ』のことで、その初版版で表紙に飾られる「金魚の魚拓」は、栃折久美子さんによるものである。

まずは、「密のあわれ」と「火の魚」を読み。
次に「美しい書物」へと。

蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ』 (講談社文芸文庫)のいいところは、「密のあわれ」も、その制作過程から生まれた物語「火の魚」も読める一冊だというところ。

密のあわれ

ということで、読みまして…。
特に「火の魚」は、短編なんですぐ読めます。

そして、『美しい書物 (大人の本棚)』で、今度は栃折さんの視点から、金魚の魚拓を作った話を堪能する。

美しい書物

ブックデザイナー(栃折さんは、このようにこだわって言う)であり、ルリユール(製本工芸)作家でもある彼女は、まだ筑摩書房の編集者だった若き日に、室生犀星に乞われて、見よう見真似で金魚の魚拓を作った。
その経緯が、収録の「炎の金魚」に瑞々しいタッチで描かれている。

こんな風に幾重にも折り重なった物語は、かえって愛おしいというか、慕わしいというか。
なんだか特別な物語に様にも思えてくるのである。

そして、それらを読みふけり、なんだか幸福な読書のカタチだわぁと思う。

室生犀星さま。
127回目のお誕生日おめでとうございます。

室生犀星の誕生日は、1889年(明治22年)8月1日。
明治大正の作家たちの本を紐解くたびに、書いた作家がこの世を去っても、さらに長く生き続け色あせない。
時々、そんな物語のすごさを感じてため息を。

「火の魚」は、本が出てから半世紀以上たった2009年、同タイトルでNHKのTVドラマになり(故・原田芳郎氏が老作家、尾野真知子さんが編集者を演じた。名作ドラマ!⇒DVDになってます。劇場版 火の魚【DVD】)、今年2016年春には「密のあわれ」も映画化されて、ますます室生犀星が生んだ物語は彩を増したような気がしますよ。

◆今日は、2016年8月1日/旧暦6月29日/水無月乙卯の日/月齢27.7日
◆日の出4時49分 日の入18時45分/月の出3時00分 月の入17時16分

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