ずーっとすれ違って未読のまま。それが、いきなり時の人になり。読んでみたら、宮下奈都さん、もういきなりファンです。

宮下奈都作品を一挙に3冊読了。

まずは、はじめからその話をすればよかった(実業之日本社)と『神さまたちの遊ぶ庭(光文社)を続けざまに。

はじめからその話をすればよかった

続いて太陽のパスタ、豆のスープ』 (集英社文庫)も読了。

太陽のパスタ、豆のスープ

…って、なんでこんな矢継ぎ早な一気読み状態になったかというと、それはもちろん同じ作家が2016年本屋大賞をとったからなのである。
(というには、ずいぶんたってますが、あまりに自分にはまりすぎて、ブログに書くのに時間がたってしまったってことなんです・( ;∀;))

いや、それは単なるきっかけで、この方のこの3作品は、私にとっては、いわば知った顔だというのに、一度も会話を交わしたことのなかったヒト…みたいな感じ。

なにそれ?意味不明じゃ!分かりやすく言え!

えーっとつまり、先の『はじめからその話をすればよかった』『神さまたちの遊ぶ庭』は、よく利用する図書館の「今日返却されたコーナー」に2冊なかよく並んでいたのに何度も遭遇した記憶。

実は、図書館にゆくといちばん最初にチェックするコーナーはここで、たいがいそこから1~2冊は借りることが多い。

同じ2冊が並んで置いてあるのを何回も…って、かなりレアケースだし、「これは、同じ読者が何回もまとめて借りだしたんだろか?」などと妄想したりしたもんで、もちろんココロに残った。

ある時などは、こんなに何度も遭遇するってコトは、大いなるチカラが私にこの2冊を借りて読めと言っているに違いない…とまで。

が、そういう日に限って、先に探さなきゃならない本があったりもして、図書館を一巡してなぜか忘れてた(笑)。

『太陽のパスタ、豆のスープ 』(集英社文庫)のほうは、もっとひどい扱い(?)。

…っていうか、ずいぶん前にタイトル&装幀に惹かれて購入。
勝手にたくさんの料理の描写であふれているに違いないという期待が、大きく外れ、そのまま未読&積読本になっていた。

だから…。

今年の本屋大賞は宮下奈都さんの羊と鋼の森です!というニュースを見て、軽い既視感。

しばし、記憶を辿り
⇒上記のことを思いだし
⇒これまでのすれ違いを悔いたのである。

ふーっ。
ってコトで、一気読み。
いままでの遅れを解消した次第。(←なんの遅れだ?しかもそのブログのアップがまたそうとう遅れました。)

先に申し上げれば、
『神さまたちの遊ぶ庭』に圧倒的に心惹かれた。

本書は、2013年4月~翌年の3月まで、北海道のど真ん中、アイヌ語で「神々の遊ぶ庭」と呼ばれる村トムラウシに移り住んだ宮下家の1年の記録。

最寄りのスーパーまで37キロ、TSUTAYAまで60キロという過疎の村。
子どもたちが通う学校は、小中学生合併校で、それでも全校生15名。
そんな別天地の暮らしも、興味深く面白いけど(学校の…というか村の歓迎会のその日。人々と深く語らう。交わされた話がすべて面白いとあった。「言葉に力がある。人間には、幅があり、奥行きがあるのだなぁとしみじみ思う」ような場所だもん)、宮下さんには、長男・中3、次男中1、長女小4の3人の子がいて、とにかくその子たちへの宮下さんのまなざし…というか、独り言的なつっこみがいい。

そもそも、義母(この息子が積極的に決めたのだが・笑)から北海道行きを子どもの教育的に良くない…的な反対をされ、成績優秀な甥の意見も反対らしく…。
しかしそのときの宮下さんの考え方が、いい感じなのである。

曰く、「たった一年間、山で暮らすことをおもしろそうだと思わず、かわいそうだと感じるのか。」

そして、甥の通う高校の偏差値(75!)を調べて、また曰く、「日本に偏差値七十五の高校がいくつあるのか知らないが、たしかに帯広にはないだろう。福井にもない。(宮下さんはそのとき福井在住。)山にはもっとない。限られたところにしか生息できない偏差値七十五の少年は、かえって窮屈だろうと思う。」

宮下さんは、人間として、いつも「気を確かに持った人」なんだ。

有事の時に「気を確かに持つ」のも難しいけど、日常の何気ないシーンでも、いつも「気を確かにもった人」。
これってかえって難しいよね。

そのうえで、さまざまなことを楽しめる人。

そんな母親の存在=宮下さんが、読者としては好きすぎた。
ああ、好きなダぁ!!と思ったエピソードが多過ぎて、もう何度も繰り返し読んだ部分多数。

うーん、前に進まないぜっ!

一方、その子どもたちも三者三様、逸材すぎるよ!!

たとえば、天才肌の長男、しっかり者の次男、アーテストタイプの長女と、皆がみなその持ち味を生かしつつ、あっという間に大自然と元気な隣人たちしかいない場所(←しかし、これがあれば十分かもね?)で、存在感を醸してゆく。

その日々が、なんだかとっても愛おしく。
最初、作家の読ませる筆致につられてどんどん読んだけれど、途中で我に返って、1ページ目から読みなおしたのである。

惜しむらくは、子どもたちの父親=作家の夫の話がやや少ないことかなぁ。

だってね、作家初のエッセイ集『はじめからその話をすればよかった』のほうには、けっこうステキな出会いの話があったりしたんだもの。
こっちは、『神さまたちの遊ぶ庭』で登場した子供たちの少し小さかった時の話とか、いまのご主人との出会いの話とかがメインのエッセイに、好きな作家の書評と自らの著作の解説などが収録。
エッセイには苦手意識があるみたいなことを書いてもいたけど、なかなかどうして、私はこの作家のエッセイはもっと読みたい。

あっ!あとね。

この2冊は、電車の中とかカフェとかでは読まない方がいいかもしれない。
涙腺の弱い私は、うるっとくること多数。
できれば、大いに涙こぼして読みたかったりしたんである。

…おっと!

『太陽のパスタ、豆のスープ 』のことに行きついてないっ!

こちらは、ヒロインがいきなり婚約破棄されて、どんぞこの気分から始まる小説。
なんか先が見えてるなぁ…。最後は、そのどんぞこから這い上がって成長してゆく物語なんでしょ。
…と斜に構えちゃったのも長く積読しといた理由。
実際まあ、そんな話なんですが…。

彼女の叔母(←この人のキャラクターがかなり好き、作家のキャラに少しかっぶってる?と勝手に思う)に「やりたいことやほしいもののリスト」を作ることを(なかばむりやり)ススメられ、いやいやながらもその通りにリストつくり⇒実行の日々。

このリストの存在が効いていました。
も少し先まで読めばもう夢中な本でした。惜しいっ!

…って、ここだけ短いなぁ。
まあ、いいかぁ。

ってことで、もう既刊作品は全部読みたい気分満点。
本屋さん大賞受賞作にいきつくのはいつのことなんでしょうか?(←最新作なんで…最後にとっときたい。)

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↓これは文庫化を待ちたいなぁ。あるいはkindleを買ってダウンロードするか。

↓装丁カワイイ。っていうかこの作家の本。装丁よければもっと売れるのでは?