NHK朝ドラの「ごちそうさん」のよれたポスターにて恐縮ですが、戦中戦後の描き方が他ドラマとは一線を画し、うーむなかなかいいじゃん(って偉そう?)と思うのでココで少々語ってみようと思う次第。
前作の「あまちゃん」が、あまりにも好みのドラマだったのもあって、最初はかなり興味がない。
それでも惰性でみれば、「ごちそうさん」ってタイトルのくせに、第一週目はジャムを池に投げたり、いちごを川に落としたりで食べ物を粗末にしすぎ…うーんどうなのかなぁコレ。
それでも、くいしんぼうな私は胃袋をつかまれると弱く…。
第2週目から第5週目の東京編は、食べものと大正時代の本郷あたりの時代考証中心に楽しみつつやや我慢。
第6週目の大阪編から、つまり11月に入って、やーっと、家庭料理というか、ごちそうさんの本領発揮!という感じになって、キムラ緑子さん演じる和枝いけずをヒロインどう乗り越えるかっ!
…という視点も追加で、面白くなった。
しかし、このドラマの価値を実感したのは、それ以降の、日中戦争に入って以降の描き方に他のドラマにはないものを感じたからでありまして。
戦争というモノが、いかに庶民に無駄な我慢を強いて、嘘八百を信じさせたものなのかがリアルに理解できて興味深くなってきた。
多くのオトコたちが、徴兵され、戦地へ向かわされたこととか、食品や生活用品のほとんどが配給になったなどは、現代の私たちでも知っていること。
しかし、もっと根源的な人権否定というか、平たく言うと、為政者側の嘘八百&やらずぶったくりなひどいコトがたくさん。
しかし、それとなく描かれていて、いやだなぁ。
いやな時代だと、他の戦争ドラマを観て思うより5割増しぐらいないやさを思う。
たとえば、労務調整令。
「40歳未満の男子は、料理人とか美容師とか、そうゆう職業に新たに就いちゃいけないのよ。」と、ヒロインめ衣子友人桜子が言っていた。
そうだったんだぁ。
コレって、戦争のためのヒューマンリソースを確保するためってコトですよね。
そうして、め衣子の次男、料理好きの活男くんは、どうしても料理人になりたくて、海軍を志願。
海軍主計科で「兵隊さんのごちそうさん」になるため出征→戦死となってしまう。
もっともひど過ぎて、憤りすら感じるのが、「防空法」の存在と、当時の国民に課せられていた防空義務。
この「防空法」1941年11月25日に改正(悪?)されて、空襲時の応急消火義務と、都市からの退出禁止などがワザワザ追加されたもの。
このタイミングで、罰則も強化された。
ドラマを見れば、空襲は「そう怖いモノではない」と、ラジオや新聞などを使って嘘偽りを流し信じ込ませる様子が描かれている。
庶民は、そんなもんかな?などと思ったりしている。
そして、「爆撃が済んだら、逃げずに消火活動にいそしむべし」ということになっていて、そのため、ドラマでもよく見る隣組の「防火訓練」などが登場。
歴史的事実を知っている現代人としては、「竹やりで米兵に向かう訓練」とともに信じられない光景なのである。
しかし、その義務を怠って、空襲による火災現場から逃げたら、最大で懲役6ヶ月または罰金500円(当時の教員の9カ月分の給料と同額…と、やはりNHKの他の番組で言っていました)が課せらる。
仮に、明日空襲が来るかもという情報が流れたとしても、そこから避難するコトすら許されなかったらしく。実際、この法律のせいで無駄死にしたヒトもいたという。
当時の政府とか軍隊が考える「お国のため」の国ってのは、国民一人ひとりの集合体ではないのは明白ですが、じゃあ、彼らの言う国ってなんだったのか?
政府や軍など、そこに所属するヒトの既得権益を維持する既成の組織を守るってことだったんじゃあないの?
…と考えてくると。
現代の原発再稼働事情なんかとすごーく似てる。
なんか、ニッポンって、いつまでもどこまでも、悪しき所がそのままずーっと続いているのかもしれないね。
そして、ドラマでは、今日、闇市に警察の手入れが入り、そこで発せられるヒロインめ衣子の叫び。
「どんだけとったら気が済むんやぁ」
そこへ、恵まれた時代に生きる視聴者である私、なんか深くふかぁ~く、共感してしまうのです。
思えば、大正時代。
暢気に美味しいモノを作っていた時代があって、あっという間にこんな戦争という事態となった。
現代だって、同じことが起こらないなんて誰も保証できないんですよね。
…ドラマを観てこんなこと。
でも、ココまで考えさせてくれる内容であってこそ、毎朝観る価値があるってものだと思うのです。