「磯の口あけ」。
ひねもす春だからなのか、聞けば、なんだか暢気なイメージ。
このコトバは、沿岸の禁漁期が解禁になった日をさすものだから、海産物によって1年中いろいろ。
ですが、やっぱり、「磯の口あけ」とか「浜の口あけ」とかいったらやはり春ですね。
春っ!
春の季語にも使われてるし、このコトバを聞いたら、磯辺で採れる海藻類が美味しくなる季節を知らせる合図と言い切ってオッケーと思う。
そんなことをぼんやり考えていたら、鎌倉方面に行った友人から、こんなお土産をいただきました。
ひじきです。
鎌倉・江ノ電長谷駅ちかくにある、石渡源三郎商店の湘南名物ひじき。
パッケージも雰囲気満点なんですが、ひじきそのものも感動モノ。
ひとつまみとって、水でもどして20分。
おおっ、これはこれはご立派な、スーパーで買っているあれは何だったんだろと思うほど立派なひじきに戻ります。
そのまま生で味見しても美味しい。
実は、このひじきを見つけて、件の友人に篤くそのすばらしさを吹聴したのはこの私です。
3年前の3月上旬。
うららかな春の日の鎌倉由比ガ浜あたりでは、ワカメが収穫中。
写真のように一枚一枚丁寧に開いて干す作業が見られました。
そんなあたりをのんびり歩き、考えるのは、ああ、わかめが食べたい(ってそのまんま・笑)。
磯の香りする生海苔もいいなぁ。
次いで、江ノ島の浜辺に並ぶ屋台で焼いたのを食べたら美味しいだろう春の貝のコト。
アワビ、トコブシなどもの解禁も、たぶんもうすぐだろうかと思ったりした。
そうだ!
とやにわに思い出し、湘南名物のしらすを買おうと勇んでお店に向かい、「禁漁中のためお売りできません」と書かれた張り紙にがっかり…ああ。
そのまま、とぼとぼ浜から山方面へと進み、江ノ電長谷駅の手前に雰囲気のある乾物屋があって、店頭には、乾燥ひじきやらわかめやら…。
「ひじき」と大書きされた袋に顔を近づければ、ぷーんと磯の香り。
中身は、乾いた状態ですら、十分立派に太いひじきで、もどして生で食べられますよと…。
…なんて、暢気まるだし(笑)
しかし、ひじきをもって帰った、その翌日。
海は、その大きな口で、様々なものを飲み込んでいった。
その年は、豊かな自然は、その一方で人間にとっての「畏怖」そのものなのだと、まざまざと見せつけられた春でした。
だから、実は、この立派なひじきも、わかめの収穫の光景がある春も、その日を思い出させるきっかけでもあって…。
「これ、袋の見かけからしておいしそうですね」と言ったら、お店の方がニコニコして「美味しいですよ」とおっしゃった。
ついでに「ひじきって、どんな風に育つんですか?」などと。
磯の岩場に根を張ってワカメなんかと同じように海中に漂っているんだそうです。
引き潮の時に、それを刈り取る。
ほーっ、そうなんだ。
お土産にもらった湘南名物ひじきは、三浦半島の限られた場所で、そんな風にして育った希少品。
他のひじきが食べられなくなりそうな美味しさです。
花咲始めた春は、美味しいものも目白押し。
北の海にも、のどかにひねもす日々が少しは戻ってきたものでしょうか?
海の口から、わかめ、磯海苔、生ひじきなどなど、何のわだかまりなく海の菜がいただける日常の春が来ているでしょうか?
そんなことを思いつつ、今日は、このひじきをいただきます。
◆今日は、2014年3月28日/旧暦2月28日/如月戊戌の日