根津神社のつつじ祭りは、コレと賑々しく連なる露店がつきものです。
本殿の傍らに美しく積み重ねられた「厄除け粽」。
普段は閑静な根津の権現様も、ここぞという年中行事の時期にもは、参詣者が激増。
先週末の休日も本殿前から、唐門のあたりまで参詣者の長い列が出来きておりました。
手水舎で身を清めたらその最後尾に並び、笹の香りが漂ってきそうな「厄除け粽」を眺めつつ参拝の順番を静々と待つ。
この「厄除け粽」(初穂料500円)は、つつじ祭りの時期だけしか授与されません。
もとめて家の入口に飾って家内安全、厄除けを願う縁起物。
私も、我が家を守っていただいた昨年のものを神社に納め、無事、新しい「厄除け粽」をいただきました。
…って、「厄除け粽」だけなら、並ばなくとも授与いただけるのですが、いただける場所が拝殿前。
なもんでお参り割愛も失礼すぎだろってコトで、毎年、列に並び→お参り→「厄除け粽」の手順になってしまうのですが(笑)。
土日ではなく、平日の朝早くなどに参れば、そんなに混むこともありません。
中身は、こんな風。
白い紙には、「厄除け粽」の由来が書かれております。
ちなみに、この「厄除け粽」は、京都八坂神社の祇園祭で、同じものが授与されているようです。
数年前の冬に京都を訪ね、まだまだ残る町屋の軒先や、立派な門構えの料亭にもこんな風に見慣れたものがあるのをみつけ。
あれはなんでしょうか?
と聞いてみれば、豪奢に飾り立てたれた山鉾が何基も街を練り歩く祇園祭においては、その山鉾ごとに意匠の違う「厄除け粽」があるのだと教えてもらいました。
…うーん、すべて、眺めてコレクションしてみたいなどと罰当たりなことをついつい思ってしまう情報ではないですか。
さっそくネットで調べてみれば、種類もカタチもご利益もさまざまで楽しい。
→たとえば京都新聞のサイトにはさまざまな「厄除け粽」
→こっちのサイトには、山鉾の位置マップまであります。
京と東の国が、こんな美しいもので結ばれているなんて、なんと素敵なことでしょう!
京都八坂神社も根津神社もご祭神としてスサノヲノミコトを祀る神社。
「厄除け粽」はこのスサノオノミコトと蘇民将来の伝説に由来し、おそらくルーツは同じ。
旅の途中で難渋していたスサノオが、その身分を隠し一夜の宿を求めた時、裕福な弟巨旦将来は断り、兄の蘇民将来は貧しいながらも精一杯暖かくもてなします。
何かよくある民話にスタイルの似たお話ですが、後に再訪したスサノオは、自らの正体を明かし、そのときすでに弟巨旦将来の妻となっていた蘇民の娘に茅の輪を付けさせ、それを目印として娘を除く弟将来の一族を滅ぼしてしまいます。
たった一夜のもてなしの有無でコレですか…。
民話というよりやはり、人智ではなかなか腑に落ちない神話の世界のお話になってきました。
そして、以後、蘇民将来の子孫は末代までずっと疫病を避けることができるとし、子孫である目印として、茅の輪を腰につけさせたのだそうです。
ちなみに、茅の輪は、6月と12月の大祓えのときに輪くぐりをするあの輪のこと。
あれを小さく造ったものを腰につけさせたということでしょうね。
もともとこのお守りは蘇民将来の子孫の印。
それが、いつしか「茅の輪」が「粽」のカタチとなって、素材も茅草から笹に変わり、飾る場所も、人の腰ではなく家の入口に目印としてぶら下げることになったというわけですね。
「厄除け粽」が似合う門口というのももはや少なく
私が引っ越してきた10数年前には、古い家屋の多かった谷中・根津・千駄木の界隈。
京都の町屋ほどではないにしても、この「厄除け粽」が玄関先に趣深く祀られる様子をよく目にしたものです。
しかし、その雰囲気のいい古い家は、ここ数年ずいぶん姿を消して、マンションなどの集合住宅に様変わりしました。
本殿横で授与される「厄除け粽」は大層な数で、それを多くのひとがもとめてゆきますが、それを飾る家の門口はもはや少なく、集合住宅ならば、玄関の内側に飾っている例も多いそう。
かくゆう私などはこんな風に飾ってしまう。
絵付きの木札は、同じく根津神社の縁起物「月次花御札(つきなみはなみふだ)」の「薬玉(くすだま)」です。
この根津神社のお札は、1月から12月+この薬玉と13種類もあって、それぞれその月に由来ある植物の絵が描かれている、なかなかに見目麗しいものにして、やはり、そこに宿るチカラが邪気や厄を払ってもくれるという優れものです。
ちなみに、この「薬玉」は、端午の節供の日に飾り、重陽の節供まで延々邪気を祓ってくれるという、中国由来、平安時代には宮中行事に使われた縁起物。
この厄除け粽と薬玉の強力パワーで、今後の厄の一切合財を祓っていただこうという腹づもりです。
しかし、これだと、いざというときスサノオさんの目に留まるかどうか…。
いやいや、「厄除け粽」は、難渋しているひとを救おうとする人のココロに対してのカミサマ・スサノオのご褒美の印。
この美しき意匠のお守りこそは、スサノオさんに見つけてもらうためではなくて、自分自身が日々目に触れる場所におき、伝説のひと蘇民将来のように日々在ることを1年試されてみようか…ってことでもあります。
なんて、詭弁かしら?やっぱりいざという時には守っていただきたいものです(笑)。
つつじまつりは、4月9日から5月6日までの約1ヶ月。
祭りが終われば、もう、東京地方は、夏の気配が満ちる日々です。
◆今日は、2014年4月23日/旧3月24日/弥生甲子の日