香りを楽しむ花というのもけっこう数多いもので、民家の庭から漂ってくるのや街路の植栽などだけをつないでいっても、けっこう1年中たのしめちゃったりするものです。
東京地方の香り花のリレーは、冬の「水仙」に始まって、春の「沈丁花」、5月上旬には「ジャスミン」と、微かに香る「つつじ」の植栽いう具合。
香るといえば、薔薇もそうなんですが、かなり近づかないと香ってこない。
香り花リレーの重要条件は、街を歩いていると、ふっと香って、足を止める香り…といたしたいので、薔薇はこのリレーには不参加とします(笑)。
で、それらの盛りが過ぎると、次は「百合」「くちなし」で、そのまま盛夏に入ってゆきます。
ただ、その「くちなし」の盛りは6月下旬ごろ、「百合」が街路の植栽というのも稀なので、私の場合は、毎夏育てているお宅の前を通って香りを楽しむという工夫を少し。
「リレーと言ってしまうのは、やや間があるかしら。うーん」
と、思って角を曲がれば、突然、甘い香りが漂ってきました。
夏みかんの花です。
曲がったのは、民家の石塀ではなくて、ビジネス街の高層ビルの角。
ビルの谷間の植栽の一部に、夏みかんが植えられて、満開の花を咲かせております。
夏蜜柑が育つ場所としては可愛そうな気も少し。
しかし、このあたりで柑橘類の花を観察するチャンスは少く、せっかくですから、しばし、そこに佇み、香りを楽しみ花を愛でよう!
果実を目的に育てられる植物は、時々、その花の美しさをついつい忘れられがち。
林檎に桃に、梨に柿…。
季節になればみんなカワイイ花を咲かせますが、梅や桜のようにそれを愛でに花見に興じるという事態にはなりません。
蜜柑の花もたぶん同様でなんでしょうね?
しかし、こうして近づいて観賞すれば、品のある香りはもちろんのこと、花の造作があまりに素晴らしくてややうっとり。
花びらは、葉っぱと同じように肉厚で完璧に白く、めしべの先の花粉の色は黄色というよりゴールドに近い。
夏蜜柑の花は、貴婦人然としております。
だから毅然と他を寄せ付けないのかと思えば、強く芳しい香りを放って、誰かを引き寄せようとする。
その一筋縄でいかない感じが、なんとも魅力的な花です。
ということで、番外編に夏みかんの花の香りで上手にバトンを渡して、香り花のリレー上半期は、こうしてつつがなく繋がりそうです。
…が、帰路。
ちょっと気まぐれにいつもと一本違う道を通れば、なんだか、芳しい香が充満する一角に。
目の前には、気になる大きな空き家が一軒。
気になっていたのは、昼間からすべての雨戸がきっちり閉まり、住民はいないのは明らかな家なのに、いつも庭木が生き生きしてるってことでして。
あっ!これだ!
柑橘系の花が咲いていますっ!
ああ、すごい!なんだろな?
みかんかな?
あっ!柚子の花??
…実のなる時期までちょっとわかりません。
この樹があるなら、みかんの花は、番外編ではないかしら?
とにかくしばし、駅へ向かうに、私はこの道を抜けることとなるでしょうね。
◆今日は、2014年5月19日/旧暦4月21日/卯月庚寅の日