なんだか、道端に、楚々と咲く紫露草が美しいなぁ…と思っていたら、
リアルな日々も、暦の上でもいよいよ季節は梅雨に入ったようです。
2014年関東甲信地方のリアル入梅は、6月5日。
東京は、数日前、暴風雨とともに、北陸、東北南部まで巻き込んで、いよいよ梅雨入りしてしまいました。
気象庁の統計によれば、平年の入梅ならば関東甲信地方は、6月8日付近という計算なので、平年より3日早かったみたいですね。
一方、暦の上での梅雨入り=「入梅」は、本日6月11日。
どの暦かといえば、二十四節気や七十二候ではなくて「雑節」によります。
古来からの暦は、「二十四節気」「七十二候」とならび、「五節供」「雑節」が主だったところ。
他の暦日は、古代中国の北部で作られ日本に渡ってきたものですが、「雑節」は日本独自のものです。
主たる用途は、やはり農業用の目安なんですが、「このあたりの時期は、確かこんな天気」という毎年の記憶の積み重ね…つまり、一応、統計的な手段を駆使して作られただろうことは想像に難くない暦。
ぜーんぶ、立春から何日目とカウントして決めらるアバウトさですが、これが、気象庁が出す、梅雨入り宣言の日とそんなに変わらないのがすごいところ。
やはり、長い経験の積み重ねというのは、侮れません。
ちなみに、「雑節」による「入梅」は、立春から数えて127日目と定められ、田植えの時期の目安のひとつとされました。
気象学的な、梅雨はどうゆう状態なのか。
科学的に言う、梅雨とは、“空の上で 暖かく湿った夏の空気(暖気)と冷たく乾いた春の空気(寒気)がせめぎあい、ほぼ釣り合って停滞し田状態。”
この停滞した場所が「梅雨前線」。
この「梅雨前線」付近では、いつも寒気と暖気がぶつかり合って上昇気流を起こして雲を作り、雨を降らせるという具合。
時々、気まぐれに雷を伴った強い雨まで運んでくるのは、梅雨入りした日の天気が如実に証明しております。
「梅雨前線」は、南の方で発生し、夏が近づくほどに、南からの暖気が優勢になって少しずつ日本列島の上空を北へと移動します。
そんなふうに、沖縄方面から、この前線がやって来て、時々、チカラが均衡してしまえば、「梅雨前線」は長逗留。
毎日どんより曇りか、しとしと雨の日が続くという次第です。
今年の梅雨は、どんな具合になるんでしょうね。
実は、爽やかな5月もまだ晩春でした
一般的には、5月に入った頃から気候も落ち着き爽やかさも増して、ついつい「初夏だ!初夏だっ!」と浮かれがちですが、その感覚だって気象学的に言えば間違い。
実は、夏の暖気と春の寒気がぶつかる「入梅」に入ってやっと晩春が終わる。
そして、そこではじめて初夏がくるのだそうです。
ええっ!初夏というのは、このジメジメシトシトの日々を言うんですかい?
そして、梅雨が続いて、季節は、少しずつ盛夏に入ってゆくという次第。
つまり、ホントの「初夏」は、爽やかさを楽しむ時期を言うのではなく、来る暑さを覚悟する日々のことを言うのでした。
ああ…。
完璧なる春を呼ぶのが「桜前線」、きっちり夏を呼ぶのが「梅雨前線」
気を取り直して、このように考えるコトに。
とすれば、桜に、梅に雨、リアルな季節の変わり目もすてたものじゃない。
暦同様、ずいぶん美しい言葉で彩られているといえそうです。
さらに、「梅雨前線」による雨は木々の緑を深めて「青梅雨」という美しい言葉を創り、紫陽花も露草もこの時期咲く花は、雨が降ってこそ、さらに際立つ艶やかさ。
もう一度、露草でも眺めましょうか
そう考えてみれば、梅雨という言葉が纏う鬱陶しいイメージもなんだかちょっと違っていた感じ。
自然の日々は、その変化のきっかけまでも、案外美しい言葉で彩るものだと思えてきます。
梅干、梅酒、梅ジュース
菊池貴一朗の『絵本江戸風俗往来 』(東洋文庫)によれば、「梅雨になると間もなく、梅干の梅の実を売り来たる声市中にひびく」とあって、東京では、ちょっと早めに青梅のお目見えでしたが、かつて江戸近郊では、入梅後が、梅の収穫の時期だったようです。
当時の行商・振り売りから買った梅の実は、きっと昔も、根気よく蔕をとり洗って、梅干しや梅酒にしたんでしょうね。
アルコールが苦手なので梅酒は作りませんが、私も、梅のシゴトは、数日前の梅ジュースの仕込みを完了。
熟した黄色い梅が出たら、今年は、梅干しにもトライしようかどうか。
少し迷ってるんですが、やりそうです。
空の梅雨前線付近に、やがて太平洋高気圧がやってきて梅雨前線は遠く北へ消え、やがて本格的な夏になるまで、ジーっと待って、やがて来たる夏の土用。
塩漬け梅は天気と相談しながら三日三晩の天日干しが待っていて、梅ジュースもたぶん飲み頃でしょう。
梅雨は、夏の楽しみの種をたくさん孕み、豊かに育てている季節なんだなと思えてきました。
◆今日は、2014年6月11日/旧暦5月14日/皐月癸丑の日