おっと、今日は土用の丑の日ではないですかぁ~!/旧7/3・辛丑

今日は、土用の丑の日ですっ!
土用丑の日といえば、鰻。

鰻といえば、私の好物のひとつ。

うな重

しかし、ここ数年の価格の高騰。
写真の様な、うな重を食べたのは、もう何年前のことでしょうか?

加えて、国際自然保護連合(IUCN)が、「レッドリスト」に絶滅危惧種として掲載しちゃったり…とか。

なんか鰻のことを無理やり忘れようとしていて、そのまま丑の日までも失念するところでした(苦笑)。

「土用」についてのおさらいを少し

「土用」は、なぜか夏場だけ話題にされるきらいがありますが、四立(立夏・立秋・立冬・立春)の直前18日間をいう、四季ごとにちゃんと存在する暦日です。

そして、暦日のジャンルでは「入梅」「八十八夜」などとおなじく「雑節」にあたる。

「雑節」の多くは、中国北部の気候を基に作った「二十四節気」のズレに対し補助的な役割をする、日本発のオリジナル。

立春から数えて何日目の気象はこうなる…的に、体験的・統計的に決めた気配のあるものが多く、実際、農事の目安として非常に重要な役割を果たしてきたそうです。

しかし、ひとつ「土用」のみは、中国古代思想である「五行説」などに由来。
「雑節」の中でもやや異質な成り立ちをもつもので、なんかなんでもありだから「雑」節ですか?
…とつっこんでみたくなりますが、この、すっきり整理できないところが、古い暦のおもしろいところでもあります。

五行説では、世の中の全てが木火土金水の五つの組み合わせで成り立つとされる

いやあ、なんかかなり無理やりな感じがいたしますが、当然、季節も「木火土金水」組合わせのどこかにわりふろうとして、
「木」→「春」
「火」→「夏」
「金」→「秋」
「水」→「冬」

で、あれれ、「土」があまったじゃないのどうしよう!

…と思ったかどうかは知りませんが、「土」は、おのおのの季節の変わり目に割り当てられ、無事「土用」の誕生です。

土用があけた翌日は、次の季節のスタート地点

現代では、うなぎを食べる日として、夏場になると急に浮上してくる感がある「土用」です。

が、土用の最終日の翌日は、もう次の季節のはじまりですから本来の役目はもっと重要。

春夏秋冬の間にたたずみ静かに、なにげなく新旧を交代させるということこそが「土用」の役目。

ここでちょっと2014年の土用を書き出してみましょう。

冬→1月17日から2月3日
春→4月17日から5月4日
夏→7月20日から8月6日
秋→10月20日から11月6日

この日付だけで、その時期がどんな感じかイメージしてみてください。

これらの日々は、暑い寒いと、もっともその季節らしさを感じつつも、すでに次の季節の予感もはらみ、行く季節を惜しむ気持ちがかすかに芽生えるころではありませんか?

近年まで続いた、日本の四季の土用の風習

この日本では、そのかすかな気配を大切に思うかのように、四季の土用の風習は、けっこう最近まで守られてきました。

さすがにその風習を体験したことはありませんが、「土用」の間は、土の気が盛んになるとして、家を建てるなどで土を掘ったりする作業を、「土を犯す」と嫌っていたのをなんとなく覚えている。

あれは、夏に限ったことではなかったかと思いますので、つい最近まで「土用」という暦日は、ちゃんと四季折々に日本人の生活に根付いていたようです。

そういえば、私の園芸好きの友人は、今でも「土用」の時期は、土いじりはしないといっていました。

しかし、かすかなものとか、気配とかいうものは、がさがさ忙しくなってしまった時代を生きる現代人には、やや遠くなり形骸化。
いつしかわかりやすい部分だけがのこされた。

そうして、土用は夏限定、鰻限定になってしまったのかもしれませんね。

夏土用の鰻。平賀源内コピーライター説以外にも実はいろいろ

うの看板

江戸の知識人の代表格であった平賀源内。

そのヒトが、民間伝承の「丑の日に“う”の字ではじまる物を食べると夏負けしない」をヒントに「本日丑の日」と書いて店先に貼ることをススメると、その鰻屋は大繁盛したという源内コピーライター説はよく聞く話。

しかし、その説も江戸東京の年中行事をまとめた『東京年中行事』(若月紫蘭 東洋文庫)にあたると、コピーライターが狂歌師の大田蜀山人に変わっていました。

そこには…
<当時名うての鰻やであった「神田川」の哀微に同情して、片肌ぬいて頓智をしぼって、店の前に「明日土用の丑の日」という大看板を立てさせた。と、それが縁となって「神田川」は瞬く間に家運を恢復しての大繁盛>
とあります。

さらに泥鰌屋「春木屋」説にまでつづき、
<土用の丑の日に鰻をつぼに入れて地中に埋めたが、幾日たっても腐らなかったところから、丑の日と鰻の縁ができて、鰻を食うようになった>
とまで。

調べてゆけば、他にも諸説がわらわら出てきそうです。

鰻じだいが夏ばてによいといわれ始めたのは1000年も前。

すでに万葉集のなかで大伴家持が詠っております。

<石麻呂に吾(われ)物申す夏痩せに良しといふ物ぞ鰻(むなぎ)漁(と)り食(め)せ>

石麻呂さんに「夏痩せにはウナギがいいらしいから、とってきて食べなさいよ」おススメしたんですよぉ。
…って、そのまんまじゃないの、万葉集にもこんな和歌があるんですね。

実際、鰻は、ビタミンA・B群が豊富なので、夏バテ、食欲減退防止の効果が期待できるとは、この時期TVといわず雑誌と言わす、スーパーの店頭にまで麗々しく掲げられる事実です。

万葉人はすでに体験的にそのことを知っていた?
そして、この和歌から解釈すれば、その辺の川で、けっこう簡単に鰻が取れた気配もあってうらやましいです。

一方平成の鰻。
近ごろは、超不漁とかで、価格高騰が続きましたが、丑の日を前に、今年は豊漁というニュースも多数。

ああ、そうなんだぁ…。
今年も、鰻は「う」の看板をながめるだけで、うどん、瓜、梅干に牛…と、ほかの「う」のつく食べ物でお茶にごし…になる予定でしたが、もしや、久しぶりの鰻丼もあり?
うっひゃぁ~!!

ちょっとこれから鰻屋の外メニューでも確認しに行ってきますっ!

◆今日は、2014年7月29日/旧暦7月3日/文月辛丑の日