明日の旧暦8月15日中秋の名月に先駆けて、今日から向島百花園では「お月見の会」が開かれます(~9月9日)。
特に、本日は、お月見のお供えをする「お供え式」。
だもんで、もう、朝から天候が気になりまくり。
ええ、ええ。
もちろん、本日も向島方面へ外出です。
…と、8月末の「虫聴きの会」→秋の七草を見に再訪→そして今日も、というように、秋の声を聞くと、どうも百花園詣での日々がスタートしてしまいます。
百花園のお月見のお供えは、一見の価値ありなんです!
でもね。
やっぱり、これは見ときたいモノのの筆頭!
向島百花園のお月見の室礼です。
これは、昨年のお供えですが、ああ、なんともステキ。
特に団子が巨大なのが、特長でしょうか。
大きなジャガイモぐらいのサイズは十分にあります。食べたら1個でおなかがいっぱいになりそう。(…って、毎年、この団子を見ると妙におなかがすくんですよねぇ・笑)
旧暦時代なら、中秋の名月の日を忘れないのは簡単
旧暦時代は、月が出ない新月の日を1日とし、三日月、上弦の月と徐々に満ちゆくのをながめつつ、月の満ち欠けを基準に日付をカウントしました。
だから、満月の日は必ず十五夜の日。
そして8月15日が、中秋の名月と、覚えるのは簡単。
年に1度のこの名月の日を忘れてしまうなどありようもなかったことでしょう。
しかし、新暦時代の現代は、中秋の名月は9月中旬から10月初旬をいったりきたり。
日々、夜空を見上げて月を眺める余裕のひとつもなければ、名月鑑賞などついつい忘れてしまいがちです。
他には…。
花屋では、芒(すすき)や吾亦紅(われもこう)などをアレンジした月見用の花束が売られる。
和菓子屋をのぞけば、月見団子がいちばん目立つところにおかれる。
…などが、ハッと気が付く目印かも。
人々がそれを忘れようとも、街は、ちゃんと月見の準備をしているんですよね。
8月15日の満月が特別な理由
<月月に月見る月は多けれど 月見る月はこの月の月>
詠み人は知られていませんが、中秋の名月を題材にした有名な和歌です。
<毎月の月を鑑賞する月は多いけど、名月を見る月は、今月のこの月だ>といった意味ですが、この月の満月が「中秋の名月」と呼ばれ、和歌になるほど、特別あつかいされる理由って何なんでしょうか?
とりあえず、私なりに答を考えてみました。
1.月の出と日の入りの時間バランスのよさ。
満月が上ってくる時間は、毎月ほぼ日没の時間に寄り添っています。
だから日没の遅い春から夏は、月の出もゆっくり、愛でるにもちょっと待ちきれないかもしれません。
ちなみに、国立天文台のサイトをみれば…。
・2014年の新暦8月の満月の日(8/11=旧7/16)の日没は、18時36分、月の出は、18時43分。
月の出の時刻は、地平線に月の中心までが出てきた時点を言いますから、人々が住まう辺りに月が顔をだすのはもっとずっとあとで、しばし闇ばかりを見て月を待たねばなりません。
加えて、耐え難い蒸し暑さだし、なんとなく月見気分にはなりません。
・同じく、今年の中秋の名月(9/8=旧8/15)の日没は17時58分、月の出は17時56分。
やっと、夕方といえる早い時間に、東の空に大きな真ん丸の月を見ることができます。
名月の鑑賞は、この東の空に浮かぶひときわ大きな月を見るというのが肝要、そして翌朝の日の出もずいぶん遅くなったので秋の夜長を月を眺めてのんびり過ごすのも可能です。
もちろん、夜の気温も暑くなく寒くなくちょうど良い。
2.お供え問題
中秋の名月の観月会は、作物の収穫を感謝する行事。
だから、そこに供えるものがなければ成り立ちません。
そして夏の盛りは、まだ作物は生育中で、なにより月に供える収穫物があがっておらずその点でも都合が悪い。
…といったあたりが、今月の月を中秋の名月とした理由ではないかしら?と思う次第です。
月見のタイミングならば10月(旧暦9月)はどうか?
ちょっと待てぃ!
旧暦9月の15夜だって、条件に大差なしでは?
…と気が付いてしまいました。
実際、日没は17時16分、月の出が17時07分。
…と、けっこうこの月も月見には似合いのバランスではないですか!
もちろん、月のあれこれを非常に大事にする旧暦時代の日本人にぬかりはありません。
1ヶ月遅れの15日から数日前の旧暦9月13日に「十三夜の月見」という行事がちゃんと用意されておりました。
しかも、今日の名月を鑑賞したのに、旧暦九月の月見をしないのは「片身月」といって、ちょっと縁起が悪い。
してはいけないことでもあると、ダブルで鑑賞することにかなりこだわってもいたようです。
9月(旧暦8月)の十五夜が中秋の名月である理由がもうひとつ。
3.秋分のころは、他の季節より月の南中度が低い+空気が澄んでいる。
つまり、1年のうちで月がいちばん身近にいるようにも見えてやはり月見に似合いの季節ということですね。
とここまで、こだわって、かつての人は、日々、月の満ちるのを眺めて今日の日を楽しみに待った。
雨や曇りだったらさぞかし落胆も大きかっただろうな…。
そうかもしれませんが、そこはそれまた見立ての工夫で乗り切ったようですよ。
中秋の名月の日が雨ならば「雨月」。
曇りで、月が見えなかったら「無月」。
…と、起こりうる事態に備えた言葉も作り、ちょっと寂しいものはありつつ、月見の行事はとどこおりなくすすめたようです。
さて、江戸の風流を今に伝える唯一の場所といってもいい百花園の月見の室礼をもう一度。
そして、昨年は、晴天に恵まれ、煌々とした満月が夜空を照らしました。
今年は、いかがなものでしょうか?
やっぱり、「雨月」「無月」はなしにして、真ん丸な姿にお会いしたいものです。
◆今日は、2014年9月7日/旧暦8月14日/葉月辛巳の日
◆日の出5時17分 日の入18時01分/月の出16時32分 月の入2時47分