芝大神宮の秋祭は、9月11日から10日間。だから「だらだら祭」と申します。/旧暦8/18・乙酉

芝大神宮の秋祭りは、今日9月11日から21日までの長丁場。

芝大神宮のお神輿

江戸時代から江戸随一、いやいや日本一長い祭りじゃないかというコトで、「だらだら祭り」という通称となりました

なんか、作り話くさいんですが、本当です。

芝大神宮は、主祭神はお伊勢さまと同じ。

天照皇大御神と(ってお祭りのお神輿ですが…。)
天照大御神の神輿

豊受大御神がいらっしゃいます。
豊受御神の神輿

つまりココは、「関東のお伊勢さま」なのです。

お伊勢参りが大流行した江戸初期のころ、江戸っ子たちは、一生に一度は伊勢神宮へ参詣したいと切望したけれど、移動手段は徒歩の時代。
伊勢はあまりに遠く、しかも費やすお金も半端ではなかった。
みなでお金を出し合い、ひとりを伊勢参りに代表派遣するなどということまであったそうです。

そんな江戸人にとって、伊勢の神を祀る芝大神宮への参詣はその代替手段。

特に、収穫祭である秋祭りには、江戸近郊にすむ農民たちも参詣におしよせ、神社のほうでは、その参詣者たちを極力受け入れようと、少しずつ祭礼期間を延ばしてきたという歴史がありました。

つまり、「だらだら祭り」のだらだらは、だらだら祭期を伸ばしたという意味でもあるのかな?
…ない?

もうひとつの通称が、しょうが祭り

このだらだら祭りは、江戸から明治時代には、その門前市で生姜が売られたのが有名で、別名「しょうが祭り」とも呼ばれたそうです。

由来は、千年以上前の創建当時からしばらく、神社の周囲が一面生姜畑だったからだとか。

近くには芝公園を配し、最寄りの駅は御成門、浜松町、大門&モノレールの浜松町…って現代のロケーションからは、もうまったく想像不可能な風景です。

そんな理由で、奉納される立派な生姜が珍しい、神前の一風景。

高知の生姜

芝大神宮の例大祭は、秋の収穫祭。
太陽のカミサマである天照皇大御神と食物・穀物を司るカミサマ豊受大御神…つまり五穀豊穣のカミサマに、今年の収穫を報告し感謝をささげるお祭りですから、周囲で採れた作物を供物としてお供えするのは当然のことで、それにあやかり、参詣者たちは、門前に売られた生姜を縁起物として求めて帰った。

門前市で売られていたのは、採れたばかりの初物葉生姜だったそうですよ。

ほらこんな風な。

葉付き生姜

…いや、ちょっと嘘です。
これは、祭りの間のみ、神社から授与される葉生姜。

実は、このお祭りの目的のひとつがコレで、江戸の頃の祭りの様子が描かれた絵木札が付けられているのもバリュー。
拡大してみましょうか。

葉生姜拡大

生姜の露天なども、たえて久しく、生姜はこうして神社から授与いただくのみとなりましたが、いつか、またいろいろ工夫を凝らして露店で売られる日がこないかなぁ…と、毎年妄想するのです。

たとえば、酉の市とかほおずき市、朝顔市みたいにいろいろ飾った生姜が売られたらちょっと楽しくないですかね?

芝大神宮の祭期伸ばしの記録

さいごに、ちょっと長々しいのですが、芝大神宮が、だらだらと、祭りの日程を伸ばした記録を調べた方の記録をご紹介しようと思います。

引用先は、長沢利明著『江戸東京歳時記をあるく』(柏書房webサイト→芝大神宮のだらだら祭り)というサイト。
ここでは、当時の資料にさまざまあたり、その祭期の変遷について調査しているのが興味深いのです。

◆17世紀末ごろの祭期は、まだ9月16日だけだった。

<1690年(元禄3年)の『江戸惣鹿子』九月十六日芝神明祭、諸人貴賤くんじゅす。すし、しゃうが、うす其外諸色市立なり」とあり、当時すでに門前市には寿司・臼などとともにショウガが売られていたことがわかる。>
<1697年(同10年)の『国花万葉記』にも「九月十六日芝神明祭」とあるので、17世紀の当社の祭礼は9月16日のたった1日かぎりであったことがわかり、まったくそれは「だらだら祭り」ではなかった。>

◆18世紀には、9月14日~16日に延長

<1735年(享保20年)の『続江戸砂子』には「九月十四日より十六日迄芝神明生姜祭」とあって、祭礼期間が9月14日~16日の3日間に延長されている。>

◆19世紀には、9月14日~21日に!

<1803年(享和3年)の『増補江戸年中行事』には「九月十四日芝神明祭、飯倉神明といふ。寛仁二年草創。廿一日迄。今は十一日よりせうが市立。」>

つまり、芝大神宮の祭りは、約1世紀かけて「だらだら」と祭期を8日に延ばしてきたようですね。
加えて、名物「生姜市」は、19世紀には、祭りにさきがけ11日からはじまっていたようで、この長い祭期の「だらだら祭り」は、すでに19世紀はじめからおなじ日程で続いてきているわけです。

日程の変遷がなんなのよ…とも思いますが、祭りの期間がこれほど増えた例って、ほかにあるのでしょうか?

江戸の「お伊勢さまの収穫祭」が、それだけ人々のニーズにかなったもので、神社の側も、祭りの運営係というのがいたのならそんな方々も、それを受け入れてゆく柔軟性が高かったということでしょうか。

だらだら祭りのクライマックスは、9月16日!

祭りの期間は長いのですが、賑々しく街をあげてのお祭りの様相をみせるのは、数日に集中します。
9月15日宵宮の奉納踊りと翌16日の神輿渡御が見どころかと。
ちなみに、かつては、芝芸者らが夜担ぐ芸者神輿などというのもあったそうで、いまはそう珍しくない女神輿の発祥の地でもあるそうです。

…といっても、私の目的は生姜なもんで、お参りは、ほぼ平日の昼間できまり。
ついでに、この太鼓もどどんといっぱつたたきつつ、由緒ある神社をゆっくり一周して楽しみます。

20100911芝神宮の太鼓

昭和2年生まれの太鼓。
今年も無事でいらっしゃいますかしら?

◆今日は、2014年9月11日/旧暦8月18日/葉月乙酉の日
◆日の出5時20分 日の入17時55分/月の出19時17分 月の入7時28分