今日は、秋の彼岸の入りです。/9/20=旧8/27・甲午

今日は、もう暑さ寒さも彼岸までの彼岸の入り。
いゃあ、季節がめぐるのは早いですねぇ。
っていうか早すぎ!

うだる暑さに振り回されて、やだなぁ…と思っていた夏が、懐かしくすら感じますよ。

彼岸入り、中日、彼岸明け…ってなんだろう?

今ではたんなる連休扱いのきらいが大ではありますが、秋分の日を中日として前後に3日ずつをくわえた合計7日間がお彼岸の期間。
この7日間は、この世である「此岸(しがん)」から極楽浄土にある「彼岸」へ至る死者の魂の修行の日々を現したものでもあって、お盆と同じく重要な仏教行事のひとつ。

そして、1日1徳目、修行のカリキュラムのようなものまであるのです。

…なあんて、偉そうに語っておりますが、私も実は、オトナになってから教えてもらった。
しかも、谷中という街に…です。

今日は、そのちょっと古い話を、思い出しつつ、このブログをすすめてゆこうかと思います。

突如、出現した、路地のアート

それは、2007年のお彼岸にはやや早い日々のコト。

根津駅から北上する言問通りに面してひっそりとある谷中玉林寺の境内は、東と北に伸びる猫道路地をかかえ、誰もが自由に通り抜けることを黙認しつつ、しかし、結界が張られているような場所。

王林寺
(今は、きれいに改修されておりますが、気分を出すため当時の写真を使用しました。あしからず)

ある日、その玉林寺を始点とした東のほうの路地が10日間だけ結界を解いたかのように、不思議な空間が現れました。

それは、仏教の教えでである「六波羅蜜」をテーマにした、路地をめぐるインスタレーション

お彼岸の入りから明けまでに1日ひとつクリアして、此岸から彼岸へ渡る修行に模して、ヒトが本当の幸福を得るための六つの条件をひとつずつたどってゆくよう、路地が誘っているようにも見えました。

◆第一の徳目は「布施(ふせ)」。
その言葉の通り「ものを施し与え、法を説き、衆生の恐怖を祓ってココロを救う修行」です。

オブジェ1路地ゆくヒトは、「布施」の暖簾をくぐり。

(実は、しょっぱなから写真を撮るのを忘れていたようで、肝心の写真がありません・涙)

その先に、こんなオブジェ。

ここは、てぬぐいに付いている紐を解き樹に結ぶという「施し」をする場所…ということで、そこに夢中で写真のことを失念しまくったようですね(笑)。

路地を進むともうひとつの暖簾、「知慧」

知恵

◆第二の徳目「知慧」は、「道理を正しく判断し、命そのものを把握する」修行。

暖簾のスカイブルーは美く。
そうそう、知恵をひとつ得ることは、こんな色の澄んだ青空を見上げた時の清々しさに感覚が近いと、頭に唐突に浮かんだコトを記憶してます。

そこをくぐれば、鏡で囲われた樹が1本。

たしか、「仕掛けに惑わされず真理を見極めよ」の意味だった?

確かに「知慧」はそうゆうこと。
精進

先に控えているのは「精進」とかかれた、緑色の暖簾です。

◆第三の徳目「精進」は、「ひたすら実践する」という修行。

くぐるとやはり1本の大木を使って、ハンモックのようなオブジェがあって、ここに寝そべって「美しい木漏れ日を見る」そして、「こころを鎮める」精進の場と道具なんだとか。

「忍辱」

おもいっきり心引かれましたが、後方から団体でやってくるひとの気配…。

あきらめました。

奥の黄色ののれんには、ちょっと見えにくいですが、「忍辱」(にんにく)の文字が書かれています。

◆第四の徳目は、「忍辱」は、「迫害に耐え忍ぶ」修行。

人形さて、「忍辱」の暖簾をくぐると、2体の人形が、もがき苦しんでいるかのような様子。

これってつまり、路地行くひとの、修行の一部を代わって引き受けてくれた?

その先には、「禅定」の暖簾。

禅定

◆第五の徳目、「禅定」は、「ココロ落ち着け動揺せず、真理を悟る」修行。

そして、最後の暖簾は「持戒」

持戒

◆第六の徳目「持戒」は、「戒律を守り、常に反省する」という修行。

ここまでたどって、思うのは、その意味深さ。

「六波羅蜜」は、観音菩薩や地蔵菩薩などの仏教界の修行者である菩薩様方のベーシックな実践徳目ですが、これら6つの徳目を実践することで、悟り(彼岸)に到る。
菩薩様が、いつか如来様に昇進(?)するためのカリキュラムでもあるのですから、あたりまえ…かな。

でも、この六つの徳目をつきつめれば、そのままこの俗世を幸せに生きるヒントでもありますね。

さて、1日1徳目ずつ修行して、7日目にやっと彼岸に到る。

で、俗世の彼岸とはなに?

…と思えば、何故か温泉マーク???

温泉マーク

空き地には涼しげな屋根が設置され、その下には足をつける水盤があったのでした。

彼岸

ああ、でもささやかな中に彼岸(極楽)というこのはあるのです。

これらは、2007年の「めくるめくろじめぐり」という街のイベント。

めくるろじめぐり

2007年9月7日から17日に行われた、芸術を学ぶひとびとによる街へのリスペクト。
そこに、ちょっといたずら心をまぶしたような面白いココロミでした。

そして、私自身は、この街の行事から、お彼岸の意味と、そこに連なる、ヒトが生きるヒントをもらったのです。

あっ、アートの可能性もね。

◆今日は、2014年9月20日/旧暦8月27日/葉月甲午の日/秋の彼岸入

◆日の出 5時27分 日の入17時42分/月の出1時39分 月の入15時17分

◎これらのイベントは、2009年まで続いたUENO TOWN アートミュージアムの一環で、そのココロミは、藝大・台東・墨田観光アートプロジェクトにつながっているようです。
◎「めくるめくろじめぐり」の詳しい内容は、今もアーカイブとしてこのサイトに残されています。⇒HAGI STUDIO