甲子、乙丑…の不思議な文字。「六十干支(ろくじっかんし)」についてまとめてみました

このブログのタイトルのなかにいつも登場する、「甲子」「乙丑」…の文字。
「きのえね」「きのとうし」…と読むのですが、それもちょっとなじみがない。

ちなみに今年は、正確には「乙未(きのとひつじ)」の年。

乙未

って、ああ、そうなの?
って感じですかね。

この奇妙な文字は、「六十干支(ろくじっかんし)」という、古代の年月月日の現し方です。

恵方の時にもちらっと書きましたが、数字の変わりに年月や日数をあらわすために使われてきたものです。

かつて古代中国から日本に伝わってきたもので、だから、たとえば昔の歴史書の年月日はすべてこの「甲子」、「乙丑」…の言葉で表されています。

なぜ数字を使わずこんな厄介なものを?

…とも思いますが、それを探ってゆくと、「数の概念を記号に置き換えたのはいつ?」とか「それを記録するようになったのは?」などの数字の歴史と古代中国で「六十干支」の生まれた背景などなど、深い深い部分に足を踏み込まなければならず。
私には、そんな難しいこと手も足もでなくなる。

よって、本日はそこのところは無視をして、六十干支の基本的な話のみです。

「六十干支」は、「十干(じっかん)」と「十二支」の組み合わせ

具体的には…。

「十干」 ⇒「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」
「十二支」⇒「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」
の組み合わせでできています。

つまり、縦に「甲子」「乙丑」「丙寅」…と組み合わせてゆく。

あれれ?
戌と亥があまるじゃん

いやそこも気にせず、「甲戌」「乙亥」…と続け、組み合わせは、10と12の最小公倍数である60通り。

実際、紙に書いてみると、クリアに解るはずです。

ちなみに、60歳になると祝う「還暦」は、この六十干支が一巡し、最初に還ったという意味です。
ついでに、30歳は「半還暦」、120歳は「大還暦」。

ふーむ。
こうしてみれば、なんとなく60年が一巡りというのが、ヒトの命の長さに対し、リアリティのある数なのかなぁ。
ヒトはもともと120歳まで生きられるようにできている=120歳寿命説というのがあるけど、それも、こんなところから来ているのかもしれませんね?

「きのえね」「きのとうし」という奇天烈な呼び名はなんなのかというと。

これもそう難しくはないのです。

それぞれ、「きのえ+ね」「きのと+うし」と分解。
ほらほら、後半部分はおなじみの干支の呼び方です。

残る部分はこんな読み方、一応、全部並べてみましょう。

甲=のえ、乙=のと、丙=のえ、丁=のと、戊=つちのえ、己=つちのと、庚=のえ、辛=のと、壬=みずのえ、癸=みずのと。

つまり「木(き)、火(ひ)、土(つち)、金(か)、水(みず)」が二回ずつ並んでいる。

さて、最後の謎。
語尾についている「え」と「と」はなに?

さあ、ゴールが迫ってきましたね。

これは「え」=兄、「と」=弟。
つまり、甲=木の兄(きのえ)、乙=木の弟(きのと)
…ってコトです。

そして、兄=陽、弟=陰の意味を持ちます。

「六十干支」は古代中国思想の陰陽五行説から生まれたカウントの仕方

陰陽五行説は、その説が生まれた当時とすれば、かなり科学的な考え方。

宇宙を構成するすべてのものは、「木・火・土・金・水」の5つの元素からできている。
さらに大きくは、陰と陽のふたつに分かれる

…超おおざっぱにいってしまうと、この2つのコトでモノ(=万物)のありようをとらえようとした。
そんな、いってみれば、スケールの大きな考え方です。

「六十干支」は、そんな陰陽五行説でいう「万物」の中に、月日や季節という目に見えない時間間隔までも取り込んで解釈しようとしたものなのです。
いや、なんだかマジ雄大な話ですね。

…って、これ以上の話は、難しくてちんぷんかんぷんなもんで、このへんで。

でも、ブログのタイトルの文字…甲子、乙丑の意味はなんとなくお伝えできたかなぁとおもうのですが、いかがでしょうか?

まあ、わかったからといって、
この現代では、「六十干支」そう役に立つものでもありません。

でも、私がこれにこだわって日々を巡ってみたいと思うのは、この暦のカウントの仕方が、過去と現在をかすかにつなぐものであるから。

知ると知らないとでは、過去へのなじみ方が違います。

たとえば、漢語体で書かれたいかめしい古文書などを目にする機会があれば、まずは、この六十干支の記述を探してみます。
見つかれば、なんとなくちょっと慕わしい。

あるいは、カミサマのご縁日
いっとう最初の組み合わせ「甲子の日」は、大黒天さんのご縁日・甲子祭。
「己巳の日」は弁天様の縁日で、「庚申の日」は、三尺の虫が天帝さまにヒトの悪行善行を伝えに行く日にして、柴又帝釈天のご縁日。
…と、カミサマ方ともちょっと近しい気分になってくる。

そうそう、甲子園球場の名前も起工・竣工の年1924年が、甲子年だったから。
60年が始まるスタート年という縁起の良い年だからつけられたんだそうですよ。

…まあ、どれもこれも、なんてことは無い話といわれればそれまでという話ですか。
それでも、日々を面白がる鍵みたいなものは、案外そんな日常と関係の薄い、こんなところに隠れているように思うんですよね。