今日は2月最終日。3月に入ると、桃の節句お雛さまだ~と思えば、気になるのは「雛市」のコト/2/28=旧1/10・乙亥

2月中旬ぐらいから、街の公共施設…図書館とか小学校あたりに段飾りのお雛が飾られて、民家の窓にもお店のショウウインドウにも雛かざりアレンジ。
それでなくとももう気分は弥生三月ひな祭りって感じで過ごした2月中・下旬です。
そして、今朝、日めくりをめくれば2月は今日で最終日。

となれば、気になっているのはひな祭りのコト。
ではなくて(笑)、かつて、京都、大阪、江戸市中の各所に立ったといわれる「雛市」のコト…なんですよね。

雛市は、雛人形をはじめとした節供用品を商う専門の露天市

江戸ならば、日本橋十軒店(じゅっけんだな)のものが規模が大きく有名だった。
今でいえば、現在の日本橋室町3丁目付近。
ちょうど三越百貨店の前の通りに市が立ち、道の両側のほかに、道路の真ん中にも背中合わせに露店の雛屋が立ち並んだんだとか。

いまでいうなら、酉の市やだるま市のような感じでしょうか?
実際、売り物の値段は、熊手やだるまのように、買い手売り手双方の駆け引きで決まるというようなシステムだったそうです。

…といっても、それも今は昔。

雛市で何かもとめるように、桃の節供に縁のあるもの探し

「雛市」ってコトバが、我が琴線に触れるんでしょうかね(笑)。
市がたたなくっても、2月のうちに雛まつり関連の何かを手に入れたい。
で、これぞというものは無いかと、毎年、よくよく注意しながら街歩き。

昨年は、ご近所の江戸千代紙の老舗「いせ辰」にて「江戸組立錦絵雛祭」という千代紙をGETした。

千代紙

コレは、組み立ててミニチュア紙製の雛壇を作るもの。
江戸時代に錦絵のひとつに「立版古(たてばんこ)」という「おもちゃ絵」があって、その一種のよう。

さあて、今年は!
と注意しつつ過ごしてもあんがい珍しいのはないのよね。
いや、ひな祭りを意識したモノはごまんとあるのですが、私としては、いかにもそれ風というのは好まない。

で、またも「いせ辰」に出向いてみる。
…うーん、残念なことにここもいかにも揃いかなぁ。

おっ!みっけっ!

ポストカード

ポストカードですが、郷土玩具としてのお雛様がそろい踏みしているのが珍しい。

右上の姉様人形みたいな2対が「薩摩雛」、隣が「吉野雛」ちょっと下がって顔が妙なのが「銀鶏(ぎんけい)雛」、もどって「越ケ谷雛」「琉球雛」…と言う風に全部名前がふってあります。

うーむ。
こうなるとその特徴なども知りたいものだわと、そのまま図書館へ。

『江戸絵噺いせ辰十二ヶ月』という本を探す。

図書館から何度も借り倒している『江戸絵噺いせ辰十二ヶ月』は、「いせ辰」の四代目広瀬辰五郎さんの著書。
1906年生まれの著者が子ども時代から思春期までの東京と「いせ辰」の様子を描いたもの。
…なんですが、季節ごとの縁起物に関する記述&写真が、これでもかっ!と言うほどたくさん登場するのである。

たしかあそこにこのポストカードと同じ絵があったはず。

…が貸し出し中!
ええっ!今すぐ知りたい!
しかし、あの本絶版なんだよなぁ…。

とそのまま神保町に出る用事があって、用事はそこそこ。
ダメもとで探しましたら…ありましたっ!

いせ辰の本

もちろん、ポストカードのお雛様の絵がそのまんま。

雛の解説

ちゃんと解説付きで乗っていました。

ってコトで、今年も「ココロの雛市」の戦利品、無事過不足なく…というより、もしかして来年の分までGETした気分です。

付録:ポストカードのお雛様をちょっと説明。

探していた古書まで入手できてうれしさひとしお。
ってことで、勢いづきまして、『江戸絵噺いせ辰十二ヶ月』の解説を参考に、ポストカードに描かれたお雛様ほかを、ネット検索なども加え、ちょっと解説いたしました。
(ポストカードの写真をクリックすると、少し拡大されますのでそちらを見ながらお読みください。)

・「薩摩雛」→薩摩(現在の鹿児島県)の顔手足もない、紙製の変わり雛。竹を心棒に先端には髪に見立てた麻糸を後ろに垂らす「薩摩糸雛」と似ていますが同じでしょうか?

・「吉野雛」→木彫りの雛。大和吉野(現在の奈良県)付近で作られ始めたのでこの名。必ず台の上に立つが、この台の桜・紅葉・流水などの絵柄は吉野川龍田川の景観をあらわす。

・「銀鶏(ぎんけい)雛」→江戸の文政年間に平亭銀鶏という雅人が作ったのでこの名。土焼きに採色。

・「越ケ谷雛」→武蔵越ケ谷、鴻巣(現在の埼玉県越ケ谷、鴻巣)付近で作られていた雛。張り子製。
(国立博物館に所蔵品がありました→越ヶ谷雛

・「琉球雛」→張り子製。衣装が十二単ではなく、琉球の正装。
(まだ作り続けている作家さんがいるみたいです→琉球張子作家 豊永盛人氏の雛人形

・「芥子雛」→とても小さいのでこの名前。紙製。

・「お伽這子」→白の絹製の、いわゆるぬいぐるみ風。幼児のそばに置き厄災除けにするため、おなかに法華経普門品、般若心経などを納めた。江戸時代モノで奥方の出産シーンとかに髪の毛がないものがよく登場します。

・「浅草雛」→明治初期、浅草の根付職人・福島親之によってつくられた。木彫りの雛で、極採色。

・「江戸一文雛」→土を捻って作られた雛。
都立図書館のアーカイブで浮世絵を見つけました。可愛いですが、人形自体も見てみたいものです。)

・「犬張子」→極採色の張り子の犬。牡牝一組で、昔は婚礼に欠かせない飾りでもあった。
(国立博物館所蔵の犬張子

・「絵櫃」→雛飾りの調度品のひとつ。菊・桜・桃などの花模様が描かかれた曲げ物。中には草餅や赤飯が入る。

・「雛椀と折敷」→同じく雛飾りの調度品。丹、緑、青で模様を描く。

・「住吉つなぎ貝」→摂津住吉神社付近で潮干狩りなどに売られた。はまぐりなどの2枚貝は、ひな祭りの縁起物。

・「鹿児島神宮化粧箱と鯛車」→3月10日の藤まつりに、摂津住吉神社付近で売られた。うーん、これは山幸彦神話関連の縁起物。3月つながりかな?お雛様との関連は不明です。
(写真を見つけました→日本列島・全国郷土玩具の旅-鹿児島県篇・第4回

◆今日は、2015年2月28日/旧暦1月10日/睦月乙亥の日
◆日の出 6時13分 日の入17時35分/月の出12時51分 月の入 2時15分

っていうかネット古書でけっこう扱いあるみたいでした。Amazonと楽天のリンクを貼っておきます。

Amazon→江戸絵噺いせ辰十二ケ月 (1978年)
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