2月の午の日のお稲荷さんはやっぱり賑やかです。「二の午」の今日は、「地口行灯」を眺めてふふふっと笑いに行ってきます/2/18=旧1/11・庚午

今日は、2016年2月の2回目の午の日「二の午」で、
もちろん、今日もお稲荷さんのご縁日。

王子稲荷の凧市も「火防の凧」の授与も、本日も行われるようですが、今日は、もうひとつの江戸独自の初午祭のお話。
「地口行灯」って知ってますか?

「地口」は、江戸人によって編み出された言葉遊び。
平たく言うと駄洒落ですね。

ものによっては、「飛んで湯に入る夏のぶし」 ⇒「飛んで火にいる夏の虫」のように。

とんで湯に入る
すっとわかるものもありますが…。
(ちなみに、何年も通ってたくさん見た中でも、私はこれがいちばん好きです)

しかし、「提灯ぶら」⇒「忠臣蔵」

提灯ぶら
って、あまりにもイメージかけ離れすぎで、平成の時代だと伝わらない。
というか、寒いおやじギャグのレベルになってしまうものもありますね。

手ごわいのは、長唄、歌舞伎・人形浄瑠璃のセリフなど。

これらをモチーフにした「地口」は、平成の世に暮らして面白がるにはそうとうな教養が必要。
江戸時代当時は、流行りの庶民文化だったのだから、おそらく誰もが知ってるコトバを、もじって楽しんだに過ぎなかったのかもしれませんけど、今や、笑うまでに「調べる」という地道な努力が必要だったりもする。

たとえば、この「はだしで本郷へゆくわいなぁ」

はだしで本郷へ

これは、八百屋お七の浄瑠璃バージョン『伊達娘恋緋鹿子』のセリフ。
そこに、「わたしゃ本郷ゆくわいなぁ」を見つけ、これをもじったものだと知りました。
となれば、歌舞伎バージョンにもこのセリフは登場している可能性大ですよね。

そして、その「地口」を元にユーモラスな絵をおこし、ちょうどA4サイズぐらいの箱行灯に描いたものが「地口行灯」。
上の3枚の写真は、その地口行灯を写したものです。

これは、江戸限定ですが、かつて、2月の午の日・初午祭には欠かせないモノで、市中のお稲荷さんにはどこにでも飾られたのだそうですよ。
江戸市中と言えば、お稲荷さんの数ではほかに並ぶ都市なしというぐらい。
いったい、午の日の江戸の町は、どんな雰囲気だったんでしょうねぇ。

2月の「二の午」は、台東区・千束稲荷神社が華やかな雰囲気に一変!

現代でも、かつての江戸の初午祭の様子を垣間見られる場所があります。
それが、ここ、台東区・千束稲荷神社

他の神社と同様に、いつもは静かな境内ですが、昨日から、もうこんな風に尋常じゃない華やかさです。

鳥居のあたり

昨年、ここに飾られた「地口行灯」は約70個。
おそらく今年も昨日から境内を埋め尽くしていることでしょう。

ちなみに、「地口」もそれに併せた絵柄もきちんときまりがあって、箱行灯の上部に施された波打つ赤&青の模様も「地口行灯」の様式美。
ちゃんと師匠から弟子へと伝えられてきたもので、初午祭の日は、氏子が行灯を寄進してこの美しい光景を作り上げているのだそうです。

毎年お参りにうかがって、一枚一枚写真を撮らせていただくのですが、あるとき「俺が寄進したのは撮ってくれた?」と、声をかけられ、今更ながらにこの光景の背景にある氏子さんたちの努力を知った次第。

稲荷神社の初午祭に「地口行灯」を飾る行事が、この平成の世までちゃんと続いてきたのは、「地口」パワーなのか?稲荷神パワーなのか?はたまた氏子パワー?
いずれにしても感謝しきりの光景なのです。

◆二月午の日の地口行灯が見られるところ
◎台東区・千束稲荷神社 毎年新暦二の午とその前日
◎台東区・吉原神社 毎年新暦一の午に実施
◎本郷・地主五社稲荷大明神 毎年不定 2016年は2月18日に実施
◎歌舞伎座や深川江戸資料館でも、初午祭の地口行灯を見たことがありますが、今はどうなんだろう?
◎浅草寺へ続く仲見世通り交差する「伝法院どおり」の街灯がこの地口行灯をイメージしたデザインになっています。こちらは、いつでも眺めることが可能。

◆地口行灯について少し詳しく書きました初午祭の地口行灯 
◆これまで撮影した「地口行灯」
・吉原神社の地口行灯2011
・千束稲荷の地口行灯2011 その1
・千束稲荷の地口行灯2011 その2

以下は、作業中。こうご期待っ!
・千束稲荷の地口行灯2011 その3 
・千束稲荷の地口行灯2014
・千束稲荷の地口行灯2015
               
◆今日は、2016年2月18日/旧暦1月11日/睦月庚午の日
◆日の出6時26分 日の入17時25分/月の出13時19分 月の入2時41分