「 ホームタウン」とかタイトルつけて、中味はハードボイルド系!

ちかごろ、発掘本(=好きな作家の本なのに未読だった本)の読書驀進中である。

コノ作家も、まめに探して読んどかないと、著作に追いつかない目に合いそうな多作なヒト。

で、本日読了したのは、小路幸也氏の2005年モノ(ああ、もうワインのごとくなってきました・笑)「HOMETOWN ホームタウン」です。
この作品、デビュー作が2002年なんで、ほぼ新人作家の時代の物語なんですが、読後感は、ほどよく熟成された感じにまずはびっくりです。
もしや、代表作「東京バンドワゴン」を超えて、私的には、もっとも好みの1冊かも。

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冒頭は、なにやら影のありそうな主人公ながら、勤め先は、百貨店というし、妹の結婚を知らせる手紙とか、いつものように、家族をテーマにした、ミステリー仕立てのハートウォーミングな物語かなぁと思う。
が、読み進めるうち、嬉しい勘違いだったことに気づき、中盤以降、ハードボイルド系探偵ものの様相。

幼いころ、ひょんなことから、知り合いになった裏社会のオトコ・草場(今は引退)。
ある事件により、いっぺんに両親も家も失ってしまった幼い兄妹の育ての親となった老人カクさんは、裏社会も表社会も恐れをなす、影の大物…だったりもして、彼らを後ろ盾に、札幌、旭川、小樽と縦横無尽に謎を追って動き回る主人公。

そもそも、若き主人公である彼は、勤め先こそ健全なる百貨店だが、シゴト自体は、百貨店内部の問題を秘密裏に調査するコトだったりもして、そのノウハウもときどき見え隠れして、そこも非常に興味深い。

ふーっ、いやあ、堪能したぜ。

昨年TVドラマにもなった代表作「東京バンドワゴン」シリーズをはじめ、この方の紡ぐ物語って、大家族によるハートウォーミングな作品。
もちろん、ベースのところでは、テーマは「家族」。
しかし、血縁によるそれを大きく飛び越え、さまざまな「縁」によってはぐぐまれる絆を描いてもいる。

そこが、すごく現代的で新しいとも思う。

ところで、小路さんの物語は、続編も多く、シリーズ化も多数。
とすれば、これはなんで1回限りの物語かなぁ…。
こちらだってシリーズ化したら面白そうなキャラクター多数なんですよ。

特に、裏社会(今は引退)の草場、裏表ともに影の実力者カクさんと、主人公・柾人が下宿する家の大家ばあちゃん(彼女もひとかどの人物である)あたりを主人公にして、スピンアウト物語を密かに希望する次第。
やや老人物語風になっちゃうかも、でも、それがハードボイルド仕立てなら、それはそれで新しいんじゃあない?