7月12日から16日は、七十二候の「蓮始開」。
言葉のとおりに、「蓮の花が開き始める頃だよぉ~」ぐらいの意味です。
確かに、6月下旬までは、まだまだ葉っぱの伸びはじめだった上野不忍の池の蓮。
それも、7月に入って数日後にぼんやりと訪ねたら、もうわさわさと大きな葉っぱを広げていました。
よくよく目を凝らして探してみれば、その蓮の葉に隠れるようにして、ピンクのつぼみがふたつみっつ。
さらに数日後の「蓮始開」の日を律儀に待っているかのようにも見えました。
そして、今日、花茎をまっすぐに立てて、もう明日には開花しそうな勢いです。
といっても、まだつぼみは少なく広大な不忍の池を全景でみれば、緑の葉っぱの海にぽつんぽつんとピンク色が浮かんでいるという風情ですが、それでも、暦の「蓮始開」とリアルな蓮の開花がほぼあったようでちょっと嬉しい。
蓮の花は早起きで、夜明けとともに「ポン」という音を立てて花開くのだそうです。
それって、ほんとですか?
と蓮の蕾に聞いても答えてはくれませんが…。
蓮は、夕暮れの前には花を閉じ、ひとつの花はこうして、3回の朝を迎え、4日目には散ってゆくのだそうです。
ええーそんな不思議な花なんですね。
不忍の池の周囲には、この時期、一挙に増える「蓮カメラマン」たち。
いやいや、そう密かに命名させていただいているおじ様たちなんですが、ときどき彼らはなかなかの植物博士ぶりで、蓮の開花の話は、耳をそばだて盗み聞きしたものです。
どうやら、蓮カメラマンは、ここに足しげく通い、経験として知った模様。
でも、蓮の花さく今頃の日の出といえば4時半ごろですよ?!
蓮も律儀で早起きの働き者ですが、それを愛でるほうもなかなかに熱心です。
働き者といえば、この蓮、本当にすばらしく役に立つものでもあるのです。
これから、育つ、地下茎は、ご存知の通り食用の蓮根。
はすの実は、生薬としても使われるし、中国の月餅、最中などに餡として入っているのをいただいたことがあります。
たしか「蓮芯茶」というお茶も、蓮の実から作ったお茶じゃなかったか。
茎は、細く裂いて繊維として使うことが可能で、実際布に仕立てて利用されているそうです。
そして、撥水性ある丸い葉っぱは、料理を盛るのに使われることも多く、 雨水のしずくが水玉になって移動する様子を見ていると、一本いただき葉っぱで水玉を動かして遊んでもみたい。
おもちゃに使う人もいそうな感じです。
日本では、盂蘭盆会のお供えを乗せるものとして、蓮の葉は今がいちばん大活躍の時期でもあります。
「蓮の葉商い」は何売る人?
答は、1年中の年中行事用品を扱う朝市や縁日の露天商のこと。
蓮の葉より、多くのものを商いしていたはずですが、それを代表して「蓮の葉商い」と呼んでいた。
おそらく、年中行事の中で盂蘭盆会が庶民にとってはいちばんの重要ごとだったんでしょう。
春夏秋冬に関わらず、彼らが季節の商品をもって現れると、「蓮の葉商い」のひとが来たという。
それは、実際に、品物を蓮の葉や蕗の葉の上に置いて売っていたことからの呼び名でもあるらしく、ああそうかぁ。
こんなところでもやっぱり蓮は、よく働いていたわけです。
そして、花は、如来さまがお座りになる台座も「蓮華座」…蓮です。
もうここまで来ると、そんじょそこらの花の役割とは比べものになりませんね。
それでも、花は花。
そんな人の価値のおきかたなど気にもとめずといったように、葉っぱは、広大な不忍の池にぎゅうぎゅうと音が聞こえるほどに密生して育ち、やがてここにもあそこにもといった感じで花を咲かす。
もし、8月中旬頃に不忍の池を上空から見ることができたなら、濃い緑地にピンクのドットを描くように見えるはずかと思います。
しかし、それだけわらわら密生し大量に咲いても、蓮はやっぱり気品忘れず。
なかなかにできた人…いや花ですよね。
◆今日は、2014年7月13日/旧暦6月17日/水無月乙酉の日