いつまでも暑いですね。
暑い暑いと、炎天下を歩き。
カフェや図書館など、涼しい場所でちょっと休憩。
なぜか、かえってどどーっと汗が噴き出す。
ハンカチなどで、汗をぬぐうだけでは足りなくて、カラダのほてりを鎮めるのにパタパタと煽ぐ。
この瞬間こそ、扇子は、夏の必需品。
炎天下の移動時には、水に、ハンカチ(かてぬぐい)と夏用の扇子。
…とか、気に入りの水玉柄で、手ぬぐい&扇子を揃えて楽しんだりするのも、暑さしのぎのひとつ。
しかし、こんなコンパクトで手軽なモノが、けっこうな威力を発揮する。いったいどこのどなたが考えたものなんでしょうか?
扇子のルーツを探ってみれば、発祥はなんとニッポン!
映画などで昔々の中国の王宮やら古代エジプトの物語を観れば、家来が巨大な団扇(うちわ)をもって、王様に風を送るというシーンは定番。
なので、「団扇(うちわ)」自体のルーツはおそらく紀元前の異国であることは疑いないかもしれません。
しかし、竹や木で薄板を作りそこに和紙を貼り付けて、コンパクトに折りたたむことすらできる「扇子」じたいは、日本が発祥なんだそうです。
紙と板だけを組み合わせて作ったにしては、相当に精巧な道具。
骨を親指でずらして押し開き、あるいは、扇子の端をもって勢い振れば扇子は開き、そこには、末広がりの美しい姿が顔を出します。
(ふふふ、こちらも気に入り。せっかくなので平等にお見せしちゃった次第です・笑)
そして、使わないときは静々と折りたたみ小さくなって存在感を消し、そっと着物の帯やバックの中に収納される。
特に、帯に挟んだ姿は、着物姿をきりりと見せて、用途を知らなければ「棒っきれ?」としか見えないだろうそれが、そこでも非常に重要な役割を見せます。
ああ、確かにこの微細なこだわりこそは、「これぞ日本的なもの」でありましょう。
扇子はかつて、扇(おうぎ)と呼ばれた。
それは、扇ぐ(あふぐ→あおぐ)から生まれた言葉「あふぎ」が変化したものだそうです。
ならば、扇子は、発祥時から今と同様、コレで風を送る用途を持って生まれたのかしら?
…と思ってみますがそうでもないようです。
最初に作られたとされる「檜扇」は、奈良時代のもの。
薄い檜の板だけを重ねて一方の端に穴を開けてそこに紐を通して縛ったという形状のものらしい。
そして扇ぐものではなくて、宮中の式次第などをそこに書いた。
…つまり、メモ帳…というかカンペ代わりという説が有力なんだそうです。
「扇いで涼をとる道具」になったのは平安時代。そして用途はいろいろ拡大してゆきます。
ひとつの道具をさまざまに活用して見せたいのが日本人。
平安時代の雅な方々には、煽いで涼をとる以外にもさまざま用途を工夫されます。
たとえば…。
・和紙の扇面の片隅に、すっと和歌のひとつも書いてコミュニケーション用に使う。
・開いたうえに花一輪などを載せ心寄せるひとへのプレゼントとしたりする。
『源氏物語』など平安時代の王朝文学によく見られる、扇の活用法ですね。
さらに時代が下ると、武家や公家の儀礼の道具にまで出世して、江戸のころには、庶民まで別なく冠婚葬祭には欠かせないものになってゆく。
たとえば…。
・白無垢の花嫁の帯には必ず扇子が、花婿も必ず扇子を持つ
…というのを考えれば、それがそのまま今の時代まで伝えられているというわけですね。
さらにいろいろ調べてゆけば、その用途は深く限りなく。
・扇子に貼られた和紙には、絵師たちによってさまざまな絵が描かれ、つまり「扇絵」というジャンルの日本画のキャンパスにもなった。
・開いた「末広がり」の形状が縁起が良いと、めでたい席での引出物にもなってゆく。
・舞や能・狂言には扇子の存在が欠かせなく。
・扇子を忘れて高座にあがった落語家は大間抜け、そばやうどんの噺になったらそのしぐさができず、酒も注げず、さまざまな見立てがままならないはずです。
・大仰な使い様の代表としては、徳川家の合戦の馬印が、全長221センチ巨大な金の扇子だったという使い方。
戦場では、名だたる武将たちはその扇子のもとに大結集をしました。
…と、順不同にかいつまんでもこんな風。
扇子は、あちらとこちらを隔てる役割までも受け持ちます。
正座して膝前に綴じた扇子を置いてお辞儀をする日本人にはなじみのシーン。
このときの扇子は、神聖な世界と俗世を仕切る結界をあらわし、こうすることによって相手に敬意を表す作法なんだとか。
ひと夏便利に持ち歩く日常品の顔をして、こんなに多種多様な役割をもつ道具。
末広がりに開いて天に向かって掲げ、やはり、扇子自体に「天晴れなり」とたたえたいほどです。
◆今日は、2014年8月11日/旧暦7月16日/文月甲寅の日/今日は、満月ですっ!
コメント
初めまして。前のサイトから拝見しています。
宜しければ教えて頂きたいのですが、こちらの扇子はどちらのものでしょうか?
自分で探してみたのですが、下手なのでどうしても見つからず・・・。
教えて頂ければありがたいです。宜しくお願いいたします。
ばこんぎさま。
ずーっと前からブログを見ていただいていたみたいで、ありがとうございます。
そして反応が遅くすみません。
お問い合わせの扇子ですが、水玉のほうが、青山のスパイラルにて、白×墨みたいなほうが、東京駅前のOAZOにある丸善で買いました。
といってもかれこれ7~8年前のモノなので今入手できるか定かではありません。
ちなみにどちらも和紙ではなくて、布地の扇子なので、もしかすると、かまわぬなどのてぬぐい屋さんとかならあるかもしれません。
…といっても夏限定かなぁ…。
お役に立てずすみません。
お返事ありがとうございました。
御礼が遅くなり申し訳ありません。
スパイラルと丸善・・・
扇子の季節になるとアタフタしてしまうので、
早め早めから動いてみます。
あと、当方京都在住ですので手ぬぐい屋さんも探してみます。
本当にありがとうございました。