ヨウシュヤマゴボウ…あれほどたくさんあったのに。/旧7/17・乙卯

7月上旬には、こんな風にいい感じで育っていたヨウシュヤマゴボウ。

青い実の洋種ヤマゴボウ

雑草・野草ジャンルに入る植物なのに、この存在感。
このまま晩夏に近づき、その実が紫色に熟し始めたなら、今年こそ、少しいただき、家に飾ってみたい。
…と、楽しみに眺めていたのでありました。

がっ!
繁殖していた、空き地や、古い家屋が軒並み更地→マンションor駐車場という今どきの変化が限りなく続き、狙っていた、採取スポットがことごとく消えてしまったのでした。

ああ、これもアベノミックス的経済政策の余波…なんでしょうか?

気を取り直して、ヨウシュヤマゴボウのことについて。

こちらが、熟した状態のヨウシュヤマゴボウ。

熟したヨウシュヤマゴボウ

その実の汁は本当に鮮やかなぶどう酒色になるものだから、ずっと「洋酒ヤマゴボウ」かと思っていました。
そしたら、海外からの帰化植物なので西洋種の意味の「洋種」、感じで書くと「洋種ヤマゴボウ」なのだそうです。

原産国は、広い広い北米大陸…ああ確かにと思う傍若無人さ。

生まれはアメリカかぁ…と知れば、あの広い土地のどんなところにどんな風に生えているものなのか、ちょっと気になるというものです。

ちなみに、その花言葉が「野生」とか「元気」とか。

そこから想像すれば、ある平原一帯が見晴るかすまでこのヨウシュヤマゴボウの群生地…みたいな感じ?

もちろん、本物を見たことがないのでわかりません。

狭い日本に根付いてからも、何の遠慮もなく紫色の太い茎を背高に伸ばし、さらに枝分かれまでして横にも延々広がる。
その傍若無人すぎる生育振りから想像すれば、故郷で育つ様子もそう外れていないだろうなと思います。

そんな茂って大きく育つヨウシュヤマゴボウですが、草々の一種ですから、晩秋にはきちんと枯れて、冬場は何事もなかったかのように地面はすっかり更地に見える。

それでも、根っこは、その名前の通りごぼうさながら深く深くしっかりと根付き、毎年根こそぎにしてやろうととことん努力してもかなり無理のようです。
地中に残った根っこの地面の際だけ引き抜いても春になるとひそかに芽を出し、ほおっておくと夏には結局とてつもなく大きくなってしまう。
だから、マンションが建とうが、駐車場があろうが、そのままにょきにょきよみがえってこないだろうか!

とつい期待してしまうのであります。

にょきにょき、元気よく生えてくるのは、初夏のころ。

街中でも民家の庭からブロック塀を越え、道路側にぐんぐんとヨウシュヤマゴボウが広がっているのを目にするのは、ちょうど季節が夏めき始めたころ。
そのまま梅雨の雨降りの日々ぐんぐん育ち、はっと気づけば、塀からはみ出たやつも空き地を席巻したやつも、最初房状にぽつぽつ小さい青い実をつけています。
触るとまだちょっと硬い。

それが秋も近い今頃になれば、ポツポツ紫色に色着き、俄然存在感を増してきます。

洋種やまごぼう 引き写真

たとえば、時々、民家の庭から塀をのりこえ生えまくっている場合もあって、この写真のヨウシュヤマゴボウなんかは、私の観察スポットのひとつ。
雑草扱いのこの種をこんな野放図に育てているというのに、塀の隙間から垣間見えた庭は、かなり丹精された庭だったりもして、そこが少し不思議ですが、きっと押し切られたんだろうね…と、なんとなく分からないでもない。

最初は、根こそぎにしようと思ったものでしょうが、ヨウシュヤマゴボウの元気さとしつこさに根負けしたか?
ままよい育ちやがれとほおっておいたら、花は可憐な白。

洋種ヤマゴボウの花

緑の若い実も美しい造詣だし、紫色に熟せば見ごたえもある。

…って思ったのかしら?

けっきょく、この家の夏の庭は、こいつに多くの面積を提供する羽目になっておりました。
少し歩けば、空き地にも大きく育ち、すっかり街の植物として市民権を得ていた…ということだったのになぁ。

もう駆除はあきらめられた(と期待して)、育つ場所を記憶してゆくころのものは、翌年も必ず同じ場所に同じようにはみ出して実をつけるのがややいとおしく、とうとう毎年出会えるのが楽しみにすらなった。

(しかし、消費税アップの決定がなされるやいなや、あっという間に、美しい庭も、いい感じに古くなった家も雑草もろとも解体されてしまいましいました。ああ残念っ!しつこいようですが、壊す必要あったのかな?)

代わりにといってはなんですが、実は、最近花屋で売られているものを見てしまいましたっ!

ヨウシュヤマゴボウにとっては、それは出世なのか不自由な園芸種への道なのかは定かではありませんが、となれば、ヒトのほうは、空き地に生えた中から少しいただきたくもなる。

実は、昨年。

こっそりカミングアウトすれば、この庭からはみ出た中から、熟した濃紅紫色と青い若い実の程よくまじったところをひと茎いただき、いさんで帰路。
家に着いて、生けましょうかと、花瓶を取り出し、はさみで水切りをし…あらら、白いTシャツがまだら紫色に染まってしまいました。

原産地アメリカで、別名インクベリーとか呼ばれ、実際、字や絵を描くインク代わりとして使われていたそうですし、実を絞った汁はかなり強固な染料になる。

ああ、忘れてました。

これはちょっとやそっとでは落ちないんでした。

いっそのこともっとたくさんいただいて一面紫色に染めてやろうか…と、またひとつ、ヨウシュヤマゴボウの生命力にぐんと支配されていっている
ようすら思えた。

そんな、昨年までが、ちょっと…いや、かなり懐かしいです。

◆今日は、2014年8月12日/旧暦7月17日/文月乙卯の日