今日は庚申の日です…って何する日?/10/16=旧9/23・庚申

このブログタイトルにいつも登場する、甲子、乙丑…の文字。

いったいこれってなんなんだろう?

…って、私も「いつかきちんと説明したいなぁ」と気にはなっていました。

これは、六十干支(ろくじっかんし)というもの。
古代中国から日本に伝わってきたもので、数字の変わりに年月や日数をあらわすために使われてきたもので、昔の歴史書の年月日はすべてこの甲子、乙丑…の言葉で表されています。

うーん。
長くなりそう、今日のところはこのあたりを覚えて以下に進んでください。

「古い歴史書なんて読まないし…」
そうですそうです、こんな表記は、現代生活にはそうそう必要な知識ではありません。

でも、時々、この「六十干支(ろくじっかんし)」が日常生活の片隅に顔を出すことだってある。
その時「おおっ!これかぁ!!」と驚いて、少しわくわくもする。
そうゆうのって、ちょっといいと思いませんか?

ヒトのカラダには三匹の虫。
彼らが日々宿主の素行監視をしております。

人間のカラダの中には、生まれたときから三匹の虫がいて、それが日々宿主を観察しているらしいという話。
聞いたことがありませんか?

(…えーっと、かなり話がそれた印象ですが、かならずつながりますのでこのまま我慢してお進みください。)

たとえば…。

日々何気なく「虫の居所が悪い」とか。
「腹の虫が治まらない」とか。

なんて言いますが、これってよくよく考えてみればちょっと不思議な言い回しです。
つまり、そう言ってしまう以上は、カラダの中にはヒトの感情を支配する虫らしきものがいるってこと?

そして、この三匹の虫。
60日に一回、定期的に天に昇って宿主たる人間の善行悪行を天帝サマに告げ口するんだそうです。

天帝サマは、ヒトの寿命を司る神。
悪行の多い人には、天の邪鬼を遣わし天罰として寿命を縮め、あるいはその命を根こそぎ奪ってゆくんだそうです。

そのタイミングが、まさに本日「庚申の日」の夜ですっ!

こりゃ大変!

庚申の夜の傾向と対策は、眠らないコト

三匹の虫は、今宵、ヒトが眠っているうちに、虫たちはこっそりカラダを抜け出して、天帝さんのもとへ。

しかし、この三匹の虫たちは、人間が寝なければカラダからは抜け出せません。

よほどの品行方正者以外は、今宵のんびり睡眠などとっている場合ではなく、夜通しおきて、花や百味の供物を供え、三匹の虫たちを供養する。

それを、「庚申(こうしん)待ち」あるいは「守庚申(しゅこうしん)」と、言うそうです。

こうして自らの悪行を正し、善行を成しながら生き、60日ごとに巡ってくる庚申の日を6回過ごせば、願いまでもが成就するんだとか。
…というのが、日本に古くから伝わる庚申信仰。

こうゆう大変な日ですから、やはり、その日がいつなのかは知っておいたほうがいい。
甲子、乙丑…で、日付をカウントする「六十干支(ろくじっかんし)」。

ちょっと気になってきませんか?

東京地方の庚申の日ならば、柴又帝釈天!

庚申の日なら、アレよね!柴又の帝釈天!」
「そうそう、映画『フーテンの寅さん』シリーズで、柴又の団子屋の店頭には、必ず帝釈天の庚申の日のポスター貼ってあるものね」

…って、そこまで知っているヒトならかなりのツウです。
(っーか寅さんの…ですが・笑)

三匹の虫をなだめる庚申信仰は、古代中国から奈良時代に日本に渡ってきたようですが、それが、密教、神道、修験道…etcと日本の各種信仰や習俗などと融合し今に至ります。
そのありようはちょっと複雑、実は、庚申信仰のことを調べるほどにその深みにはまるので割愛。
っーか、私の手には負えません。

吹っ飛ばして、江戸時代。
全国津々浦々の庶民たちに広まって、「庚申講」という組織まで数多く作られました。
そして、稲荷信仰、地蔵信仰などとともに民間信仰の中心的な存在のひとつとなっていった。

江戸時代の人々の信仰パワーってすごいですよね。

そのエネルギーが、形作ったのが、帝釈天の庚申の日。

帝釈天題経寺のご本尊は日蓮聖人が彫ったとされる「帝釈天の板本尊」ですが、それが一時期所在不明となって、再び発見されたという伝説。
その発見日がまさに庚申の日です。

「柴又の帝釈天さんが庚申の日に出現した!」

となれば、庚申信仰に熱心な江戸人のことです、柴又の帝釈天とその庚申の縁日は有名になるのは想定内。
そのまま、庚申さんと帝釈天が都合よくミクスチャされて、今に至ったというわけです。
(もちろん、60日に1回縁日があります→帝釈天公式サイト

ただし、帝釈天の庚申の日のシンボルは、虫ではなく申(さる)にいつの間にか変わっております。

ちなみに、「申=猿」と発想をすれば、神話世界で「ニニギ神」が天尊降臨のとき道案内役の神となった「猿田彦」。
実は、神道の世界でも、この猿田彦神が庚申信仰と融合し、そのシンボルとなっていたようです。

庚申の日のシンボルが申(さる)である証拠は今でもあります。

江戸時代に、「庚申信仰」盛んだった印がこちらのような石の塔。
やや地味で目立たないものの、注意して街を歩けば、東京の街でも「庚申塔」に出会うこと多数。

「庚申」「庚申塔」と彫っただけのそのものずばりとか。
「青面金剛」「猿田彦大神」のように主尊の名や姿を浮き彫りにしたものなどもあって、種類も多数。

そして、これが証拠の「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿が彫られたもの。

庚申塔 茗荷谷
東京メトロの丸ノ内線・茗荷谷⇔後楽園のあたりをうろうろしてたら見つけました。

拡大すれば申がカワイイ。

庚申塔さる3

東京で確実に合いたかったら、都電荒川線の巣鴨庚申塚駅。
そのものずばり駅名にもなっていますが、ここにもあります。
巣鴨庚申塚

庚申塚は、辻に立って、旅人の道案内にも一役かった。
その役目を終えたものは、近所の神社や寺に奉納されるという例も多数で、お参りついでに境内を探索すれば、意外に簡単に出会えます。

そう覚えて注意していれば、どの町に行っても、路傍や辻や、町村を見下ろす丘などには必ず庚申塔を発見可能。
これはけっこう楽しい。

今夜、庚申待ちの供養だけではやや不安が残る?

…という悪行多き…いや心配性なあなたなら、天の邪鬼が嫌っているといわれる「身代り申」吊るすという、万全策を講じましょうか。

身代わり申1

この赤い不思議なカタチのものは、庚申さんのお使いの申を型どったお守りとされ、軒につるして魔除けとし、家の中に災難が入ってこないようにするものなんだそうです。

ヒトの代わりに災いを受けてくださることから「身代り申」。
身代わり申

あるいは、背中に願い事を書いてつるすことから「願い申」とも言われます。

さらにさらに、やっぱり不安だわ…なんて方には、こんにゃくを食べるという奥の手もあります。
実は、三尸の虫はこんにゃくが嫌いなんだとか。
で、いっそのこと、それを食べて虫を追い払ってしまう…などという風習までもあるにはあって、いやいや、それはちょっとやりすぎではないですか?

虫であろうとなんであろうと、何か大いなるものがいつも見ているという考え方は、ヒトのココロと行いを正す古代からの知恵。

60日に一回、ヒトにはやや厄介な日が用意されていると考えればつまらないものも、ひとつ考え方次第です。

ふたつきに一度ぐらい、ちょっとわが身を省みて正す一晩と思えば、随分価値ある風習です。

◆今日は、2014年10月16日/旧暦9月23日/長月庚申の日/下弦の月
◆日の出5時48分 日の入17時05分/月の出23時32分 月の入12時38分