七十二候は「閉塞成冬」って、まさに冬!しかし、今日は旧暦えびす講。実際はこんな寒い時期!とやや驚く/12/11=旧10/20・丙辰

新暦では、もう12月も中旬。
七十二候だって、「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」(12月 7日~12月11日)のとおり、晴れても空気は凛と冷たく。
曇ればなんとなしの閉塞感。

とにかく空気も気分も寒い寒い。

がっ、今朝がたカレンダーを眺めてみたら、旧暦ならばまだ今日は10月20日!
江戸時代には、まだまだ、えびす講なんかが行われていたんだぁ…と、この季節のズレにややビックリ。

現代は、新暦10月19・20日に日本橋小伝馬町・宝田恵比寿神社の恵比寿祭として、もうとっくに執り行われてしまったけど。
時と場合によっては(今年は、閏月が入って9月が2回あった..とかね)、このような寒々しい時期にえびす講が行われる年もあったいうわけなんですね。

と言うことで、今日は、えびす講のことを少し調べてみようと思う次第。

「べったら市」は、「えびす講」の門前市

現代は、恵比寿祭とべったら市が一緒くたになっているけど、「べったら市」は、「えびす講」のための道具市というのが正しい位置づけ。

江戸の風俗をまとめた『守貞漫稿』『近世風俗志(守貞謾稿)〈4〉』 (岩波文庫 喜田川守貞著)から、旧暦10月19日の「べったら市」の様子を探ってみれば…。

<十月十九日大伝馬町壱丁目にて市あり。
明日、蛭子命を祭る用の小宮および神棚・切組三方あるいは小桶・俎板の類、または、蛭子神に備ふ小掛鯛等、南北店前に筵を敷きこれを売る。
また新漬大根をうる。
いわゆる浅漬けにて、干大根を塩糠をもって漬けたる。
けだし麹を加えたるを良とす。>

この「新漬大根」が「べったら漬け」のコト。
<いわゆる浅漬け>とあるので、大根の旬の11月下旬から今ごろの旧暦10月20日のほうが、美味しいだろうという理屈。

…うーん。
かえって、恵比寿祭も今頃やったほうがいいんじゃあないの?

しかし、「べったら漬け」以外にも、神棚や、恵比寿さんが抱えているあの鯛までも売られているってのが、驚きというか面白そうというか…ですね。
現代の恵比寿祭の露店は、周囲が繊維関連の問屋街ということもあって、衣服とか靴なんかが多かったような…。

ちなみに、この市は、19日の一夜限りでした。

そして、あけて旧暦10月20日が「えびす講」

商家でのえびす講の行事の様子は、『日本年中行事辞典』 (角川小辞典 16)(鈴木棠三 著)のほうに、詳しくありましたのでそれを参考にまとめてみましょう。

まずは、添えられた挿絵をみればこんな風。

えびす講 挿絵
(写真をクリックすると大きくなります)

・座敷の床の間に恵比寿神の神像を飾る(挿絵の右奥に恵比寿さんの絵が描かれた軸がかかっていますね)
・恵比寿神の前にはさまざま供物を供える。(いろいろありますが、ちょっと見難い。詳しく見たいですが…)
・座の中央には、大きな鯛の尾頭付きをはじめ豪華な料理。
・料理を囲んで、羽織袴で正装した商家の店主たちといった面々。

「えびす講」って、かなりお金の掛かった豪勢な行事だったことが見て取れます。

皆、楽しそうに手拍子などうっております…これはなぜ?

これは客人が買い方と売り方に分かれてする売買の真似…という催しで。

座敷に並んだ道具や商品などに
<千両・万両などと値をつけて、売りましょう、買いましょうといって手をしめて祝う>
のだそう。

この挿絵で、手拍子をとっている風に描かれているのは、売り買いの手じめの様子なんでしょうね。

これは、「えびす講」につきものというか、欠かせなかった催しだったそうです。

さすが、商人のお祭りです。

個人的に惹かれた、「蛭子切(えびすぎれ)」の記述

さらに、『日本年中行事辞典』 (角川小辞典 16)(鈴木棠三 著)を読み進めば…。

<店先に蜜柑や銭ををまいたり、呉服商では、平生の残り切れなどを蛭子切(えびすぎれ)といって、福箱に入れ早朝から売り出す>
という記述にぶつかり、ここで、大いに気になる「蛭子切(えびすぎれ)」

ただの端切れなんでしょうが、それが福箱に入って売られる。
なんだかとっても縁起がよさそう。

うーん、欲しい。

というのを知っていたもので、10月恵比寿祭には、「蛭子切(えびすぎれ)」気分でコレを嬉々として求めました。

手ぬぐいと福財布

「べったら財布」と手ぬぐい。

もちろん端切れではなくきちんとした完成品ですが、布製+恵比寿さんの縁起物なので、勝手に「蛭子切れ」だと思ってしまえっ!
ってコトです。
(過ぎてしまった話で恐縮です。新暦10月20日の恵比寿祭のみ、臨時の社務所が開かれ、そこで授与いただけます。ぜひ来年っ!)

恵比寿さんが描かれた黄色いほうが、「べったら福財布」。

黄色地の木綿に恵比寿さんが黒くくっきり。

べったら財布拡大

ニカッと笑ったお顔と、捉えられた鯛の困り顔…なんだかその対比がとってもおかしい。
個人的には好き過ぎる絵。
…とくに鯛!

ふふっと思わず笑ってしまって、ほらほらソコに福が来るって感じでしょうか?
ちなみに、ご利益は、黄色い財布から当然「金運向上」。

手ぬぐいは、品の良いモスグリーン

手ぬぐい

恵比寿神の神紋「つる柏紋」が染め抜かれた手ぬぐいは、なかなかに洗練された意匠です。
この手ぬぐいには「市の神」と、恵比寿さんの別称も染め抜かれております。

「どちらも、染めが自慢」と、素人目にも品が良い紋付袴を身に着けて、恵比寿祭では売り子を買って出たといった風の日本橋の旦那さんたちの弁です。
ああ、これはこれは。
この方たちこそ、江戸時代の「えびす講」の宴から出てきたようなたたずまいだわぁ。
…と密かに思ったモノです。

…って実は、大掃除しなくちゃなぁ…と、しぶしぶ明けたタンスの引き出し。

こんなのが出て着ちゃったもんで、掃除をせずに、あれこれ夢想。
⇒参考書なども紐解いて調べ…。
⇒ああ、面白いじゃあない。

…と、大掃除はそっちのけ。
で気が付けば、あら旧暦10月20日っていまごろなの?
と妙に符合することまで気が付いて。

ならば、せっかくなので、ちょっと今日にこじつけ紹介させていただいた次第です。

やや季節外れのお話にてお粗末さまでございました(笑)。

◆今日は、2014年12月11日/旧10月20日/神無月丙辰の日
◆日の出 6時40分 日の入16時28分/月の出20時58分 月の入 9時47分