可愛過ぎて捨てられない、今は亡きM伯母さんの服

昭和一桁世代の母は、モノがない時代に育ったゆえにモノをスパッと捨てられない。
それが、ようやく少しずつでも整理しょうかと思い始めたらしいが、それはひとえに、ある日、何かどうでも良い会話の折に、「東京では古い衣類を引き取ってくれるようになった」と言ってしまったことによる。

時々、発作的に我が家に送られて来る古着入りのダンボール。
しかし、その中身は、母の服ではなくて、数年前に80代半ばで逝った、伯母の服だったりするところが、やや情けない。
お母さん、どんどん増殖する貴女のあの安物の服はどうするの?

さて、その伯母の服。
一例をお見せすれば、実はこんな感じでなかなか素敵だったりもする。

叔母の服201006

伯母は、大正生まれだが薬剤師で、言ってみれば、まだ当時珍しかった職業婦人。

稼ぎが良く、こうしてみるとあんがい着道楽だったみたい。
たしかに、記憶をたどれば、身につけるもののセンスも良かった。

ちなみに、写真のブラウスはどちらもオーダーメイド(既製服はまだ少なかったのかな?)、布地の柄も私の世代には新鮮に見える。
たしか、以前、同じように送られてきた中あったオーダーメイドのスーツは、ボタンも布も非常に凝ったものだった。

水色のカーディガンのリボン刺繍は、なんと手縫いで縫い付けてある贅沢さ。

…これらを、あの古着回収所に持ってゆくのはしのびなく。
実は、ちゃっかり私の服にしてしまった。

服を買わない生活のはずが、こうして、我がタンスには、何故か時々服が増えてゆく。

そして、捨てられないという意味では、私もしっかり昭和一桁の血を継いでいるよ。
ああ、お母さんもう送ってこないで…。