10月の観音さまの縁日は、菊供養会です/10/18=旧9/25・壬戌

毎月18日は観音さまの縁日で、10月の今日は、浅草寺の菊供養会です

明治30年から、観音さまの重陽の節句として続いているこの行事。
もちろんかつては旧暦9月9日に行っていて、10月18日に変えられたのは戦後。

観音様の縁日18日で旧暦9月9日にいちばん近い日だから、という理由らしいです。

新暦どおりの重陽の節句は、まだ菊の季節でもなくちょっと寂しかったけど、今ごろならば、菊は盛り。
ちょうど良い日付設定だったんじゃあないでしょうか?

秋の意匠で装った仲見世をつっきり、浅草寺の境内を入るとささやかながら菊花展の催しもあります。

秋仕様の仲見世

浅草寺の菊供養会は「菊とっかえ」の供養がメイン

それは、境内の露店で菊を求め、観音様にお供えし、代わりに他の菊をいただいて帰るというスタイルの供養。

そういえば、すれ違う人々の中には、菊の一束を抱えた人もちらほらといらっしゃる。

かつては、境内にずらりならんだといわれる菊の露店も今はたったひとつ。
それが、これから「菊とっかえ」をしようという参詣者によって、飛ぶように売れております。

ああ、こうしちゃおれない!

「すみません私にも菊ひと束いただけますか?」

菊とっかえの菊

無事GETしました!

菊供養会の手順はこんな風です。

1.境内で求めた黄色い小菊をもって、まずは、観音様にご挨拶。

…の前に、本堂前の香炉の煙に小菊をかざすんだそうです。
小菊の束をもってバタバタと拝殿へ向かわんとすれば、見知らぬご老人から、そうと教えていただきました。

白髪をきりりと短くカットして、ポロシャツにスラックスの小柄ながらも姿勢の良いおじいさま。
おそらく地元のかたでしょうか、うそかまことははわかりませんが、浅草にきたら浅草の方に習うが王道。

見よう見まねで私も小菊をさっと煙に近づけてみます。

2.香炉で煙をいただいたなら、拝殿へ。

お賽銭箱の前で、まず観音様にご挨拶をし、右手奥から内陣へ。
履物を脱いであがれば、三方に載せられたおびただしい数の黄色い小菊が美しく、菊の香がほんのりと漂っております。

3.我が手にあった小菊の束をそこに納め、僧侶の方から別の小菊をいただきます

そこでいただくのも、ほかのどなたかが納めた小菊。
他の参詣者が奉納したものを交換するという参加型の供養の仕方が、新春の頃の天神様の「鷽替えの神事」に少し似ているでしょうか。
少しリクリェーション的な雰囲気が楽しくて、しかも、きちんと観音様のご利益もついてきます。

4.もう一度観音像にご挨拶。

こんどは、きちんとご焼香をさせていただきます。
浅草寺の観音様は秘仏ですからお姿は見えませんが、その前にささげられた仏器には、まあるい菊の花が一輪ずつ盛られて、それがちょんちょんと6器。
何だかとっても可愛いらしい。

出口のところで、花束を丁寧に白い紙に包んでいただきながら伺えば、今日の菊供養の法要で、僧侶の方々によって供えられたものだそうです。
いつもの浅草寺のささやかな違い…といったらいいでしょうか。
それを楽しんだりもして、菊供養は無事終了いたします。

5.いただいた、菊はそのまま大切に持ち帰る。

・乾燥させて枕に入れれば頭痛をはじめとした病気除け
・銭箱に入れれば小遣い銭にこまらない…って、銭函はないから、貯金箱に忍ばせようか?
・さらに逆縁の不幸もきっちり避けてくださるんだそうです。

重陽の節句の菊は、長寿をかなえてくれるアイテム。

浅草寺の菊供養会の菊のご利益は、それとちょっと似ているものの、やはり町民庶民相手の観音様の年中行事ですね。

少しばかりささやかで、ほほえましい。

菊供養会には、金の龍が登場!

ご利益をいただいた小菊を抱え、そういえばしばらくぶりの浅草寺。

あっちへふらふらこっちへ寄り道などしていれば、龍がひょいと登場しました!

「金龍の舞」が奉演される。

そうそう、菊供養会では「金龍の舞」が奉演されます。

この舞は、浅草寺に三つある寺舞のひとつで、長さ18メートル、約88キロもある龍をたった8人で支え、あたかも本物の龍が舞っているかのように操作する。
龍の背後には、お囃子が乗った山車も出て、中には、浅草界隈の芸者さんたち。

芸者さん

日本髪に小菊が飾られちょっと可愛い。

小菊は枯れても捨ててはいけない

そんな様子をぼんやり見てたら、「ちょっと、あなた」と声をかけられました。

振り返れば、香炉のあたりで、お会いした(たぶん)浅草のおじいさま。

私の小菊を指差し、「その菊は枯れてもけっして捨ててはだめですからね」
と、おっしゃる。

家にもどって、菊はまず、しかるべき場所に供え、枯れるまでそのまま。
そして、大晦日がきたら、お焚き上げの代わりに火鉢にくべるかどんと焼きで供養するのだそうです。

いまだ火鉢がある生活にこそ似合った信仰のカタチを垣間見た感じです。
いいですね…。

了解しました。
けっして粗末に捨てたりしないようにいたします。

浅草という街の気風なのか、こんな風に、良きおせっかいの言葉かけをいただくことは、一度や二度のことではありません。
もしかすれば、「この作法をきちんと受けついてゆけ」と、浅草寺に宿る先人たちの気のようなものに伝えられているのかもしれません。

◆今日は、2014年10月18日/旧暦9月25日/長月壬戌の日
◆日の出 5時50分 日の入17時03分/月の出 0時25分 月の入13時50分