2014年の神田祭は陰祭ですので、江戸の当時を想像してみました/旧4/15・甲申

私の住む東・東京方面は、夏祭りの日々に入り、ときどき、遠くの方から、神輿を担ぐ声。
おや、空耳か?
とも思いますが、3~4kmの距離を風にのって、賑わいの様子が運ばれてくるようです。

下町の祭りは、下谷神社とともに神田明神の神田祭からはじまって、神田祭のそれはひときわすごい盛り上がり。
…ですが、今年は陰祭。
町内を渡るお神輿はありますが、それが神社境内に入るクライマックス宮入はありません。

ということで、今年は、この夏祭りの日々に併せ、神田祭の江戸時代の様子をちょっと想像してみようかなと思う次第。

神田明神の大祭・神田祭は、かつて、「神輿渡御祭」と呼ばれ、豪奢に飾り立てられた山車が何台も連なり、江戸市中を練り歩くのが祭りのクライマックスでした。

その様子を描いたモノが、大鳥居から神田明神境内に入ってすぐ右手、神楽殿のシャッターに色鮮やかに描かれています。

神田祭入口シャッター

江戸時代には、将軍家の産土神である日吉山王権現(現在の日枝神社)と、平将門にゆかりある神社で江戸の総鎮守である神田神社(神田明神)の二つのみが、江戸城内に山車を入れることを許され将軍の上覧を配しました。

だから、この二つは特別に「天下祭」とも呼ばれ、交互に本祭と蔭の祭りを行い、本祭の年のみ隔年で江戸場内へというのが決まりだったのだそうです。

現在の神田祭は、担ぐ御神輿がメイン。
曳き物である「山車」は数台となってしまいましたが、それでも当時の佇まいはしっかり残されて、その豪華で威風堂々たる姿は一見の価値ありです。
たとえば、こんな山車も登場します。

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酒呑童子(しゅてんどうじ)という鬼の首を象ったとされる「大江山凱陣(おおえやまがいじん)」。
かつて、天下祭の名物とされ、江戸っ子の人気を博したものなんだそうです。
「江戸名所図会」など、過去の資料に戻って、平成19年に復刻されたものです。

こんなものが、何十台も町中を練り歩いたとなれば、江戸のそれは、想像するだに凄すぎる祭りだった。
現代の山車は、それを雄弁に語ってもいるのです。

さて、その様子をもう少し詳細に知りたければ、今度は、大鳥居の左側の小さなスペースのほうへ。
そこには、当時の神田祭の様子を描いた大きな錦絵のレプリカが飾られています。
全景を写すことができませんので、8分割にしてここに紹介してみましょうか。

右上のタイトルのある部分から。

神田祭2011右上

富士山を背景に据え、大きな山車が練り歩くのは江戸の街。

山車の列は、どこへゆくのかと、視線を左へ。

神田祭2011右中

汐吹くじらの山車もあります。コレは、長崎県のおくんち祭りで登場する汐吹くじらと関係あるんでしょうか?

さらに左へ。

神田祭2011右中2

山車の下の方にちまちまと描かれているのが、それを運んだり、囃し立てたりする人々です。ヒトと比べてみれば、山車の巨大さがわかるというモノ。
こんな巨大なモノが、江戸市中を練り歩いたって思うと、タイムワープしてそれを見物にいってみたいです。

神田祭2011左上

やっと、絵の上の方の最後に到達。

下に視線を向けますと、山車の上に掲げられた人形やら鳳凰やらも細かく眺められて面白いです。

一気に見てゆきましょう(各写真は、少しずつずらしてとりましたので、同じものが重ねて登場しておりますのでご注意)

神田祭2011左下

神田祭2011右下中2

神田祭2011右下中

神田祭2011右下

ちなみに、数えてみたら、描かれている山車は36基。

それぞれ、氏子町々にちなんだ人形や飾りを天辺に飾った山車は、町の象徴でもあったそうです。
さらに、山車に続いて、当時流行した様々な文化芸能…たとえば、能、浄瑠璃、歌舞伎、舞踊などを屋台の上で演じ、それが引かれてやってくる「踊屋台」。
そして、草双紙や伝説をテーマに取った「仮装行列」。
それらが、山車の附け祭りとして続き、神田祭の行列は江戸城を中心にした巨大なパレードであったことがよくわかります。

ちなみに、一番下の絵の左端に描かれているのは、江戸城内へ入る田安門。
そこからたどってゆくと、神田祭の行列は、将軍様の上覧のために城内にも延々並んでいるのがわかります。

私は、この絵が好きで、ただ眺めるのを目的に、神田明神へ伺ったりもしますが、ここは、拝殿やお土産コーナーの賑わいとは一線を画すかのようにひっそりとして、この絵はそう多くのひとに眺められることはありません。

だから、いつもたった一人で何時間も見放題。

一方、華やかな祭りの様子は細部に至るまで丁寧に描かれていて、ここに無料で展示しておくのは惜しいぐらいです。
何度行って眺めても飽きがまったくこないのは、毎年、同じ祭りを眺めて昂揚感を感じるのと同じかもしれません。

さて、神田祭は、例年5月上旬の土日を挟んだ1週間。
神田明神のサイトには、もう来年のスケジュールが記載されおりました。

平成27年5月
7日 (木) 鳳輦・神輿遷座祭
8日 (金) 氏子町会神輿神霊入れ
9日 (土) 神幸祭
10日(日) 神輿宮入
14日(木) 表千家家元奉仕献茶式
       明神能・幽玄の花(金剛流薪能)
15日(金) 例大祭

…と言う感じ。陰祭とはいえ、今年の祭りの真っ最中にもう?!
と驚きますが、それだけ、神田祭を楽しみに過ごすひとびとが多いというコトなんでしょうね。

もちろん、氏子でない私でも、すでに来年の神田祭のことを考えています。

◆今日は、2014年5月13日/旧暦4月15日/卯月甲申の日