七十二候は、今日6月26日から「菖蒲華(あやめはなさく)」の季節に入っております( 7月1日まで)
東京地方は、5月上旬の「文目(あやめ)」に、中旬の「杜若(かきつばた)」と杓子定規に咲く時期を分けるもんだから「いずれが文目か杜若」の言葉のとおりになんだかさっぱり区別がつきません。
6月に入って、今度は、また同じく種属の「花菖蒲」の見ごろが始まり、ますますアヤメ科アヤメ属の大混乱。
素人にとっての区別法は、「文目」と「花菖蒲」が湿地に育ち、「杜若」は乾いた場所を好むことぐらい。
それと、5月から6月にかけての花の盛りのズレでしかなくて、一緒に並んで咲いてくれればあるいは微妙な区別がわかったりする?
…と、そのとおりにまとめて並ぶ図鑑を見ても、なんだかやっぱり全部同じに見える。
日本の「花菖蒲」人気は他のふたつを引き離し圧倒的1位!
その理由は?
いやいや、日本全国北から南に広がる、おびただしい数の「花菖蒲」園の存在を見れば明らかでしょう。
となれば、桜のように「花菖蒲前線」なんてのもあるんでしょうか?
あまり聞きませんが、作ってほしいような気がします。
ともかく七十二候が「菖蒲華(あやめはなさく)」に併せ、花菖蒲もまだまだ美しくさいております。(ちょっと盛りはすぎたかなぁ…)
おススメは、江戸から続く名所、葛飾区の「堀切菖蒲園」
ここは「花菖蒲園」のはしり。
堀切周辺での花菖蒲の栽培は、さらに古く室町時代から始まっていて、その立地を生かしてなのか、幕末の頃には、もう小さな菖蒲園が多数存在。
菖蒲園が、そのまま花のショールーム的な役割を持ち、来訪者たちは無料で花菖蒲を楽しむことができました。
湿地帯に花咲く美しい花菖蒲が植えられ、各所に風雅な板橋がかけられて、花をめでながら散策を楽しむ鑑賞法。
それは、当時新鮮な光景でもあり、野趣を好む江戸人たちに非常な人気を博したそうです。
そして今も同様に楽しむ現代人です。
当時、江戸市中からは徒歩ではやや遠い堀切でしたが、舟で隅田川を渡って行く便が発達し、その気楽さが行楽地人気の後押しをした。
今は、京成電鉄にちゃあんと、「堀切菖蒲園」駅というのが存在します。
「花菖蒲」もまた、江戸時代の園芸ブームが育てた花
花菖蒲も、梅に桜、躑躅などと同様、江戸の植木職人たちが、競って数多くの品種が生み出し、松平定朝という旗本までが著名な育種家として大きな貢献を果たしました。
一方、当時の花菖蒲人気は、一部の愛好家の手中に納まるものにとどまらず、江戸庶民に広く広がります。
それは、「堀切の花菖蒲」が、歌川広重の「名所江戸百景・堀切の花菖蒲」をはじめとして多くの絵師のよる浮世絵に残されていたころからも明らかです。
浮世絵を見れば、そこには花菖蒲をめでて楽しむ庶民が描かれることも多く、そもそも浮世絵の多くは、今でこそ博物館や美術館にあるものですが、当時の購買層は江戸庶民。
版元も絵師も江戸人の楽しみのために描いたものだったのですから、花菖蒲の江戸庶民人気の大きな証拠としてなんの遜色もありません。
現代の「堀切花菖蒲園」は、かつてとほぼ同じ場所にあります。
今も東京都民をはじめ庶民が憩う場所。
もちろん、無料で花菖蒲を楽しむことができます。
そして、花の種類もかなりだし、いちいち添えられた名札を見るのもちょっと楽しい。
…っていっても、色以外の違いってちょっと判らないんですがね(笑)。
この黄色いのが、ちょっと好き。
こちらはどんな花だったか一応興味ありな…。
どこどなくでっぷりした印象の華なんですかね…。
花の頃は一足早く終わったみたいです。
周囲は、首都高の高架下あり、住宅の密集地帯ありの正真正銘の東京の町並みの中なってしまったものの、花菖蒲の咲く頃は、浮世絵に描かれた頃を彷彿とさせてくれる光景が広がって、現代にいることをちょっと忘れてしまう不思議。
それが、なんとなく快感でもあり、楽しくて、毎年せっせと足を運びます。
ずっと過去から繰り返し繰り返しそこに咲き続けた花菖蒲の花のチカラは、時々、一瞬、時間旅行まで演出したりするのです。
◆今日は、2014年6月26日/旧暦5月29日/皐月戊辰の日
◎堀切菖蒲園の情報→平成26年度花しょうぶだより(堀切菖蒲園開花情報)
あっ!菖蒲祭りは昨日までだったみたいです!情報遅いよ!いや、七十二候によれば、「菖蒲華(あやめはなさく)は、今日からなんですってば!